定額料金で映画やドラマが見放題となる動画配信サービスの世界最大手、米ネットフリックスは8日、米スター俳優のブラッド・ピットさん(51)が代表を務める映画製作会社「プランBエンターテインメント」と共同で戦争アクション映画を製作すると発表した。2016年後半に劇場公開しネットで独占配信する。全世界で約6200万人の会員を擁するネットフリックスは映画や番組の独自製作を強化しており、ハリウッドの既存映画会社の脅威となっている。日本でも今秋からサービスを開始することが決まっており、米エンタメ業界の“台風の目”が旋風を巻き起こしそうだ。
■37億円投入、8月から撮影
「時代の最先端を行くコンテンツを製作し、それを世界中の視聴者に届けるというエキサイティングな取り組みに参加できて、興奮している」
ピットさんは、共同製作の発表に合わせて喜びのコメントを出した。
米メディアによると、映画のタイトルは「ウォー・マシーン」。豪州出身のデビット・ミショッド監督(42)がメガホンを取る。13年に33歳で事故死した米ジャーナリスト、マイケル・ヘイスティングス氏のベストセラー本が原作で、主人公のアフガニスタン駐留米軍司令官の将軍をピットさんが演じる。アフガン戦争を風刺的に描くコメディーになるという。
製作費としてネットフリックス作品では過去最高の3000万ドル(約37億4300万円)を投入し8月から撮影に入る。
ネットフリックスのコンテンツ部門の最高責任者、テッド・サランドス氏は「ブラッドとデビットは、刺激にあふれ、魅力的な映画を製作するのに最適なチームだ」と自賛した。
1997年に設立された新興勢力のネットフリックスは、最低料金月額7.99ドル(約1000円)で映画やドラマなどを見たいときに見られるネット配信サービスで台頭。世界50カ国以上に進出すると同時に、ハリウッドに対抗して映画や番組の自前製作にも参入。独自コンテンツを武器に今年4月には会員数が6000万人を突破した。
■「アカデミー賞の対象に」
8月には米国・中国・香港・台湾合作の大作映画「グリーン・デスティニー」(2000年)の続編の公開も控える。この映画は、劇場とネットで同時公開するという“掟破り”でも話題になっている。これまではハリウッドとつながる劇場主協会(NATO)に配慮し、劇場公開よりネット配信を遅らせるのが常識だったからだ。協会は「映画館に客が来なくなる」と激怒している。
ピットさんとタッグを組む今回の映画も同時公開されるとみられており、米CNNテレビ(電子版)は「世界中の映画の公開方法を変えようとするクーデターだ」と論評。英紙デーリー・メールも「形だけでも劇場公開することにより、米アカデミー賞の対象になる」と伝え、劇場公開は賞狙いのアリバイ作りにすぎないとの見方を示した。
今月初めに、2年後に200カ国でサービスを提供すると宣言。今秋には日本にも上陸する。今回の映画も当然、公開されるほか、日本向けの独自コンテンツを製作すると噂されており、日本の映画・テレビ業界も戦々恐々だ。
8日には米アップルが日本を含む100カ国以上で定額で音楽が聴き放題となる配信サービスを始めると発表しており、IT・ネット勢力の台頭でエンタメ業界は激変期を迎えている。