自民党の谷垣禎一(さだかず)幹事長は2月、麻生太郎副総理兼財務相に会食に誘われた。「おい、谷垣。お前は誰を育てようと思っているんだ」。腰を落ち着けるなりこう切り出した麻生氏に、谷垣氏は驚きを隠せなかった。自身も同じことをたずねるつもりだったからだ。
今年70歳になった谷垣氏にとって「後進の育成」は最大の関心事だ。幹事長就任から約1カ月後の昨年10月には、2012年の衆院選で大量当選した新人議員を対象に昼食懇談会を開催。野党時代の総裁として選挙戦を率いた経緯から「私にとっては虎の子の119人」と、思い入れたっぷりに挨拶したこともある。
ただ、安倍晋三首相(党総裁)が「ポスト安倍」の育成に着手しているのに対し、谷垣氏は将来の首相候補となりそうな中堅の育成には消極的にみえる。首相は、衆院当選4回で自身と思想信条の近い稲田朋美政調会長らを育てようとしているが、谷垣氏は目先の国政選挙をにらんでか、支持基盤が弱い若手を中心に世話を焼いている。