東京・日本橋室町に建つ三井本館が脳裏をよぎったのは4月21日のこと。自衛隊が、国際平和に向け活動する外国国軍の後方支援を随時可能にする新法《国際平和支援法》案に自民・公明両党が合意したとの情報に接した直後だった。三井本館こそ、戦後日本の安全保障政策の進路を大きく誤らせた出発点で、以降半世紀近く「外敵より自衛隊を警戒する」時代が続く。それが阪神・淡路大震災(1995年)や北朝鮮の弾道ミサイルの日本列島越え(98年)に慌て「自衛隊より外敵を警戒する」ようになる。そして今、中国軍の異常な膨張や東日本大震災(2011年)での大活躍もあり《自衛隊による(・・・)安全確保》はほぼ(・・)国民の共通認識に至る。この程度の国際常識に到達するまで戦後70年、自衛隊の前身組織創設以来65年も掛かった。もっとも国際平和支援法案は、自衛隊に対する不信感とその政治利用のため、何が何でも国会の事前承認を前提とする悪法となった。いまだ《自衛隊からの(・・・)安全確保》を謀る系譜を感じる。