【ソーシャル・イノベーションの現場から】
「庭が広いので子供とたくさん遊ぶことができます」「鉄道が好きなので子供を迎えたら、一緒に電車に乗りに行きたいと思います」
もし子供と一緒に暮らすことができたら、こんなことをしてあげたい。集まった20組の夫婦が自分たちの思いを語る。子供といっても血のつながった子供ではなく、特別養子縁組で子供を迎えることを希望している夫婦たちだ。日本財団が2014年12月に実施した養子縁組研修の一コマである。
特別養子縁組は、生みの親が育てることができない子供のための福祉政策として25年ほど前に設立された制度だ。戸籍が実子と同じ表記になること(長男、長女など)、生みの親との親権が終了すること、原則として子供が6歳になるまでしか認められないことなどが、普通の養子縁組と違う。
子供を迎える方法としては、住んでいる都道府県や政令指定都市の児童相談所に里親登録するか、民間の養子縁組団体に相談するかのどちらかになる。全国で約2500人の養子縁組里親が登録しているが、毎年の養子縁組の件数は約300件で、待機している夫婦のほうが圧倒的に多い。多くの民間団体でも、育てられないという相談より、子供を育てたいという相談のほうが多い状況にある。