【尼さんの徒然説法】
冬の間は枯れているように見えていた境内の枝垂桜(しだれざくら)。その枝先には固いつぼみが出始めています。春告げ鳥が美しい声を披露するたびに少しずつ少しずつ、そのつぼみは膨らみを増していくのでしょう。境内の彩りが「春色」に染まるのも、もう少しです。
季節の変わり目には必ず予兆があり、冬から春に変わる頃は春一番が吹き、そして「菜種梅雨」と言われる春の長雨。しとしとと降る雨に洗われた草木は生き生きとしてみえます。その様子を見るたびに私は法華経薬草喩品(ゆほん)の中に説かれている次のお話を思い出します。
「この地上には名も知らないような小さな草から天を貫くような大きな木など、実にさまざまな草木がある。大きさや形が違う草木にも雨は平等に降り注ぐ。草木は私たち衆生であり、雨は仏様の慈悲である」