海水から塩を作る場合、雨が少なく乾燥した土地では、海水を塩田に引き込み、太陽熱と風で水分を蒸発させて塩の結晶を得る天日製塩の方法がとられます。しかし、多雨多湿の日本では天日製造は難しく、海水を一旦濃縮し、それを煮つめるという2段階方式の平釜製法が用いられてきました。1905年、産業としての基盤づくりと財政収入確保から、国は塩の専売制度を実施し、これは97年まで続きました。日本中で皆が同じ「食塩」を使ってきた時代を経て、現在では、ご当地の名前を冠したさまざまな美味(おい)しい塩が手に入るようになったのです。
コミック誌の人気漫画にも取り上げられた「玄さんの塩」もそのひとつ。登場人物の一人が「もっと早く出合いたかった」と大絶賛しています。その美味しさの秘密は、沖合約30キロの海域から取水される海洋深層水から平釜製法で作られていること。濃縮に逆浸透膜を用い不要なものを取り除き、平釜にかけることで表面をにがりがコーティングし、甘みのある奥深い味が誕生するのです。