夜になって少し雨が降った。乾燥した空気が湿気を帯びてきたせいか、寒さが和らいだようにも感じる。2014年12月31日も残りわずか。すでに午後11時を過ぎている。紅白歌合戦では今頃、誰が歌っているのだろうか。
雑念と煩悩をどっさり抱えたままJR横須賀線の北鎌倉駅で電車を下り、駅の北側にある円覚寺の石段を上がる。
雨はもうほとんどやんでいるのだが、境内の石畳はうっすらと濡れていた。三々五々、訪れた人たちは山門をくぐると左側の緩やかな坂道を上がっていく。僧堂で除夜の鐘を突くことができるからだ。
その人の列を外れ、国宝洪鐘(おおがね)を目指す。こちらは初詣の人たちではなく、お坊さんたちが突く。
臨済宗大本山円覚寺は弘安5(1282)年、鎌倉幕府第8代執権、北条時宗が宋から無学祖元禅師を招いて開いた。2度にわたる蒙古襲来によって殉死した人たちを、敵味方の区別なく平等に弔うために建立されたという。