「夏の力士役へ向けて、体重を12キロ増やした。お客さんからよく見えるよう、舞台で顔を大きく見せたかったから」
歌舞伎俳優の若手の中でも、誠実な演技で目を引く25歳。6月末から7月にかけて行われた全国巡業公演「松竹大歌舞伎」まで、春ごろから1日4食、炭水化物をもりもりと食べた。4月のある日の昼食は-。
「うどん1玉、カレーライス1人前、牛丼を1杯。それにコロッケと天ぷらを付けました」
本物の力士と見まがう食べっぷりで、7月、東京、静岡、愛知など16都道府県へ巡業。「双蝶々曲輪(ふたつちょうちょうくるわ)日記」の舞台に立った。父が三代目中村又五郎の名を継ぎ、自身も父から歌昇の名を受けて四代目となった同時襲名披露興行。1カ月ごとに演目が変わる歌舞伎の世界で、体重を増やす特別な準備は「襲名にかける思いが強かった。400年の歴史で練りあげられたものを守りつつも、時代に合わせ、皆さんに楽しんでもらえる歌舞伎を担いたい」。
さて、食欲の秋。実りの季節に、食べるのをこらえた減量も見事だ。体力を維持しつつ元の体重へ。「水分はきちんと摂取し、人間、水分だけで生活できると実感しました」