予約できるのは半年先から、しかも毎回十倍近い倍率で、話題となっているJR九州の豪華観光寝台列車「ななつ星」。深いワインレッドの重厚感あふれる外観に、まるでオリエント急行のような超豪華な車内に憧れる人は多いだろう。しかし、九州を走るユニークな観光列車は、ななつ星だけではない。雄大な阿蘇の山間を走る「あそぼーい!」、桜島の絶景を間近に眺めながら錦江湾沿いを行く「指宿(いぶすき)のたまて箱」…。
今、九州では見て、乗って、撮って、さまざまな楽しみ方ができる観光列車が相次いで登場している。マイカーを最大の移動手段とする九州では、日常の移動に鉄道を利用する人は少なく、ローカル線が多くてドル箱路線もない鉄道事業は赤字続きだ。そこでJR九州は、豊富な観光資源を活用して、列車の旅そのものを楽しみながら観光地へ客を運ぶ方法を模索。思わず乗りたくなるような観光列車を生み出した。鉄道を点から点の単なる「移動手段」ではなく、「乗ることそのものが目的」となるようなシフトチェンジに成功したのだ。現在では人気路線は予約が殺到、親子連れを中心に旅行客でにぎわう。