【ソーシャル・イノベーションの現場から】
「新しい、つらさが出てきました。でも、問題が出てきたときが、次の段階に進むとき。もっといいケアを追求したい」
自宅のような場所で人生の最期を迎えられるホームホスピス「楪(ゆずりは)」を東京都小平市に開設して4カ月。代表の嶋崎淑子さん(66)は、ともに働く北山真樹さん(44)と顔を見合わせてほほ笑んだ。どこにでもいるお母さんのようなやわらかい笑顔。しかし、2人は、終末期のケアを追求する同志だ。
家族として24時間寄り添う
人生の終末期を自宅で過ごしたいと願う人が、8割もいるといわれるが、ひとり暮らしや老々介護、家族の負担といった理由で、多くの人が病院や施設で最期を迎えざるを得ないのが現状だ。ならば、住み慣れた地域で、自宅にいるような生活を送りながら最期を迎えられる場をつくりたい。そんな思いから生まれたのが、「ホームホスピス」だ。
2004年6月に宮崎市にオープンした「かあさんの家」が草分け。その趣旨に共感した人たちが後に続き、東北から九州まで全国約20カ所に広がっている。