2014.8.20 12:30
甲子園球場には、さまざまな「物(もの)の怪(け)」が棲(す)む。勝利の女神が微笑むことがあれば、魔物がいたずらをすることもある。
夏の全国高校野球選手権1回戦。今大会初の延長戦となった鹿屋(かのや)中央(鹿児島)と市和歌山(和歌山)の熱戦は、まさかの幕切れとなった。
延長十二回裏1死一、三塁、鹿屋中央サヨナラのチャンス。市和歌山の内野陣はマウンドに集まった。半田監督の指示は「三塁走者がスタートを切れば本塁返球。動かなければ併殺を狙え」だった。三走がホームを踏めば、その瞬間に試合終了。3年生にとっては、高校野球との決別となる。
鹿屋中央の山本監督が三塁走者の太田に与えた指示は「ゴロGO」。打球が転がればすべてスタートという明快なものだった。投手赤尾のカーブを打席の米沢がフルスイング。バットはボールの上っ面をたたき、大きく弾んだ。
太田、GO。打球はセカンドの正面へ。市和歌山の二塁手は、3年生の山根翔希。161センチ、52キロの小兵ながら、守備の要。見事なグラブさばきで何度もチームを救ってきた。