【本の話をしよう】
コミック、アニメーション、そして小説…。複数のメディアで輝きを放つ新鋭、小林エリカさん(36)。自身初の長編小説『マダム・キュリーと朝食を』は、第151回芥川賞と第27回三島由紀夫賞の候補作となった。キュリー夫人やエジソン、そして東日本大震災。時空を自在に行き来しながら、見えないものの存在を問いかけた。
放射能や時間…
本作の「あらすじ」を説明するのは難しい。「大きな地震と津波」のあとに、放射性物質をおそれた人間たちが去った「北の町」から、「東の都市」へとやってきた猫。猫は目に見えない“放射能”を「光」として見ることができる。かたや、震災の年に生まれた少女、雛(ひな)の祖母は“放射能”を「音」として聞く。その2つの語りに加え、20世紀初頭のエジソン研究所周辺に生きる猫と犬の恋物語、キュリー夫人の生涯などが複雑に織り込まれていく。