【本の話をしよう】
私は読み狂人、明け方から暮れ方、深夜深更にいたるまで読んで読んで読みまくった挙げ句、読みに狂いて黄泉の兇刃に倒れたる者。そんな読み狂人の私が考えるのは、人間の心棒、ということである。
曲がったり折れたり、難しい
これは読み狂人が20年くらい前にたてた仮説なのだけれども、人間が働いて銭を儲け、人と共同して生きていけるのは人間にある種の心棒が入っているからで、その心棒が入っていないと人はぐずぐずに崩れ落ち、あるいは、ガソリンスタンドの前においてある風船人形のように風をはらんで意味不明な動作を繰り返し、滅亡没落してしまうのではないか、と読み狂人は思うのである。
その心棒は生まれながらに入っているのではなく、言葉がわかるようになった後、親や学校の先生に入れてもらって初めて入る。どういうことかと言うと、向こうからバッグを持った女性が歩いてきたとする。そのバッグはとても素敵なバッグでどうしても自分も持ちたくなった。そこで、落ちていた棒を拾い、すれ違い様、女性の頭を棒で殴って昏倒せしめ、その隙にバッグを奪う、というようなことをする人はほとんどいない。なぜなら、「人を傷つけてはならない」「盗んではならない」という心棒を子供のうちに入れられているからである。