2009年に結成された5人組のバンド、パスピエは、11年に発表した最初の音源からユニークなバンドという印象だった。エレクトロなサウンドを基調とし、独特の展開で曲が進んだり、はたまた演奏のグルーブを聴かせるファンキーな楽曲があったりと、聴くものを楽しませてくれる。最新作の「幕の内ISM」は、そんなバンドの進化と真価を聴かせてくれる作品に仕上がった。
初期のころ印象的だった電子音よりも、バンドの個々の楽器の生音が前に出て、演奏そのものの力強さが特徴的に聴こえてくる。リーダーの成田ハネダは「アルバム全体では、このバンドの持つ『和っぽさ』を表現したいと思ってました」と言い、作詞とボーカルの大胡田なつきはそれぞれの楽器の音からインスパイアされたという言葉遣いを盛り込んでいる。「雅」「うつせみの世で」などの歌詞にも注目してほしい。
楽しめるポップス感
個々のメンバーの音の絡み合いが絶妙な楽曲もあり、エレクトロポップなバンドというイメージだけでは語りきれない音世界がある。