【メディアと社会】渡辺武達
新たな万能細胞とされた「STAP細胞」論文問題がメディアをにぎわしているが、万能細胞研究者ではない筆者にその科学的真偽は判断できない。しかし、英国で発行されている権威ある科学誌「ネイチャー」に掲載された論文についての議論はあまりにもいい加減で、報道も理化学研究所(理研)や共著者に対する批判や糾弾だけに終始している。
「金のなる木」にむらがる
「刺激惹起性多能性獲得」(Stimulus Triggered Acquisition of Pluripotency)の頭文字から命名されたSTAP細胞は、小保方晴子(おぼかた・はるこ)研究ユニットリーダー(30)を中心とするグループが作製に「成功した」と発表されたもの。2012年度のノーベル生理学・医学賞を授与された山中伸弥(しんや)氏らのグループが開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)よりもはるかに簡単な方法で、万能細胞を作製できたとの説明がなされ、世界を驚愕(きょうがく)させた。