ウクライナ南部クリミア自治共和国の議会前で、多数派のロシア系住民とイスラム教徒のタタール系が数千人規模のデモ合戦を展開したのは約1週間前。だが、間もなくロシア部隊とみられる勢力が議会などを占拠し、タタール系は影を潜めた感がある。「軍事介入が本格化すれば少数派の私たちが攻撃対象になる」。親欧米派の暫定政権を支持するタタール系は、そんな不安を抱きながらロシアの介入に静かに反発している。
自治共和国の中心都市シンフェロポリでは連日、クリミア半島の掌握を進めるロシアを歓迎するロシア系のデモが行われているが、タタール系は市内の主要モスク(イスラム礼拝堂)でもあまり見かけない。
「ロシアが(ロシア系住民の保護という)軍事介入の名目を正当化するため、私たちを悪者にする挑発行為に出ることを恐れている」。タタール系住民組織の幹部、ジェリャロフ氏(34)はこう話した。「今は『行動なき行動』が基本方針」だという。