着陸したい氷河に近づくと旋回しながら地形を調べ、次第に高度を下げていく。そして着陸すべき雪原すれすれを一直線に飛びながら、突然窓を開け、てるてる坊主を投げ捨てるのだ。次々と放たれた黒い袋は力なく雪上に舞い降り、純白のキャンバスに確かな黒点を刻む。機上から見るそのサイズは畳の上の米粒のようではあるが、熟練したパイロットにとっては滑走路に輝く誘導灯なのである。
さらに数回の旋回を重ねるうちに着陸のシミュレーションを頭で行い、いざランディング。手に汗握る助手席の写真家をよそに、パイロットはいたって平静だ。何度かのバウンスの後に、機体はまるで最初からそこに着陸することが決まっていたかのように、何事もなく雪上に落ち着く。
2カ月後の迎えの日を手帳に書き込み機内に乗り込むパイロット。これほど頼もしいパートナーは他にはいない。(写真家 松本紀生、写真も/SANKEI EXPRESS (動画))