「プーチンは出ていけ!」。ロシア正教の総本山でウラジーミル・プーチン大統領(61)を批判するパフォーマンスをして懲役2年の刑に服し、刑期を3カ月残して恩赦によって23日に出所した女性パンクバンド「プッシー・ライオット(子猫の暴動)」のマリヤ・アリョーヒナさん(25)とナジェジダ・トロコンニコワさん(24)が28日、内外の報道機関を集めてモスクワで記者会見した。会見は2時間にも及び、2人は「恩赦は(来年2月の)ソチ冬季五輪へ向けての政権の宣伝行動であり、偽物。私たちの信念は不変で、プーチン政権への抗議活動を決して止めない」などと意気軒高に語った。
■「闇のような男」
アリョーヒナさんはモスクワの東400キロにあるニジニノブゴロドの刑務所に、トロコンニコワさんはシベリアのクラスノヤルスクにある刑務所に収監されていた。
AP通信などによると、会見でアリョーヒナさんは開口一番、「ウラジーミル・プーチンに関する限り、私たちの考えは全く変わっていない。彼は直ちに政治の世界から退場すべきだ」と力説。トロコンニコワさんも「プーチンのロシアで最も恐ろしいことは、言論の自由が保障されていないことだ。彼は、閉ざされた闇のような男で、チェーカー(かつての秘密警察)そのものだ」などと、プーチン氏を酷評した。
海外でもないモスクワでの記者会見にしては余りに過激な物言いに記者たちも驚かされ、「(五輪後の)再収監は怖くないのか」と問われると、アリョーヒナさんは「今さら怖いものなどない。恩赦だって拒否できるものなら拒否していた。宣伝行為に乗せられるのは不本意」と言い切った。
母でもある2人をめぐっては、マドンナさん(55)やオノ・ヨーコさん(80)ら著名なアーティストが釈放を求める公開書簡を発表するなどしていた。釈放を受けて海外からは多数の公演依頼が来ているというが、トロコンニコワさんは「ありがたい話だが、当面はバンド活動を復活させる予定はない。今は音楽などの間接的手段ではなく、直接的に政治活動に関わりたい」と語った。その上で、氷点下25度以下の厳寒で劣悪な刑務所生活を強いられたというトロコンニコワさんは「まず、刑務所の環境改善。そして無辜(むこ)の政治犯たちの広範な釈放を働きかけていきたい」と語った。
アリョーヒナさんは「プーチンのいないロシアを早く実現したい。(プーチン氏の政敵で10年以上獄中生活を送り、今回の恩赦で釈放された元石油大手ユコス社長の)ミハイル・ホドルコフスキー(50)こそが大統領にふさわしい」と述べた。
■政権内外に難敵
ソチ五輪の開会式へは、招待を受けた欧米首脳の欠席発表が相次いでいる。いずれも今年ロシアで発効した同性愛宣伝禁止法など人権侵害への政治的抗議の一環とみられ、ドイツのガウク大統領、フランスのオランド大統領、ポーランドのコモロフスキ大統領、米国のオバマ大統領らが欠席を表明している。さらに米国は、開閉会式に出席する米政府代表団に同性愛者であることを公表している元女子テニス選手、ビリー・ジーン・キングさん(70)らをメンバーとして送ると発表。同性愛宣伝禁止法への反発を強くにじませた。
ロシアのビタリー・ムトコ・スポーツ相(55)は欧米首脳の欠席発表が相次いでいることについて「侮辱を感じていない。政治家にはとても忙しいスケジュールがある」と述べているが、内外にプーチン政権が難敵を抱えているのは間違いない。