【メディアと社会】
東京都知事の猪瀬直樹氏が12月24日、辞職した。都から補助金を受けている医療法人「徳洲会(とくしゅうかい)」から昨年12月の都知事選直前に5000万円を借り入れていた一連の問題の結末である。
この不可解な金のことがメディアで報道されたのが11月22日。知事選で430万票という個人では日本の選挙史上最多の票を集め、今年9月には石原慎太郎前都知事時代からの悲願であった2020年五輪の東京招致を実現したばかりの絶頂から、選挙費用の虚偽報告や都議会での虚偽答弁といった疑惑にまみれ、最後は後見人の石原氏の「聖断」による辞職勧告を受け、まさに天国から地獄への転落ドラマであった。
「半沢直樹」の影響
公人である都知事が、庶民には現金で家に置くことなど考えられない多額の金を無利子無担保で、都庁の権限の範囲にある病院の幹部から受けとっていいはずがない。ただ、猪瀬氏への批判がエスカレートし国民が固唾をのんで注目した背景には、先のTBS系ドラマ「半沢直樹」の影響で、悪事をはたらき権力を得た者への制裁が国民の支持するところになっていることがあるように思える。各政党も、そうした庶民感情に敏感になり、猪瀬氏を突き放したのではないだろうか。