□映画「母の身終(みじま)い」
ナントいう映画だ! 痛いではないか! 重いではないか! 忘れられないではないかー!と心の中で叫びながら映画館を出た。ステファヌ・プリゼ監督(47)の演出はまるで観客の内臓に剣山を何度も浅く押しあてられているような痛みを強いる。そんなヒリヒリ感の中、人生について、家族について、愛について考えさせられ、何度も自分自身に繰り返し投げかける問い。どう生きる? どう死ぬ? どう愛し愛されたい?
しのぎを削る演技
フランスの小さな町。トラック運転手のアラン(ヴァンサン・ランドン)は麻薬密輸の罪で18カ月間服役し出所する。48才にもなって独り立ちできない息子を迎える母(エレーヌ・ヴァンサン)は苛立ちを隠せず久しぶりの親子の再会も殺伐としたものになる。埃(ほこり)ひとつない部屋で禁欲的な日々を過ごす母と、就職もままならないストレスを母にぶつける幼稚な息子アラン。お互いへの愛情を心の奥底のどこにしまったのかさえ忘れたような2人は、優しい言葉を掛け合うこともできず傷つけ合う。