1943年夏、スペイン国境にほど近い、ドイツ占領下のフランスの片田舎。長引く戦争に嫌気がさし、すっかり創作意欲を失った老彫刻家(ジャン・ロシュフォール)は、スペインの収容所を脱走した若い娘メルセ(アイーダ・フォルチ)と出会う。その美貌に魅せられ、メルセをモデルに再び制作に着手するのだが…。
スペインのフェルナンド・トルエバ監督(58)が彫刻家アリスティド・マイヨール(1861~1944年)の人生に着想を得て映画化した。プロモーションで来日した監督は「実は彫刻家の兄と一緒にこの映画を作ろうと考えた時期もあるが、兄は96年に事故死し、私は制作を中断した。その後、私の頭の中にあるいろんなアイデア同士が戦いを繰り広げ、植物のように静かに育ったのがこの作品。兄にささげたいね」と感慨深げに語った。
映画化まで20年近くを要したもう一つの理由は「人物像を構築するには自分も年齢を重ねなければ不十分」との思いから。90歳近い友達を訪ね、老い、生と死、後に続く若い世代へ残すべきものといったテーマをぶつけ、意見交換も重ねたそうだ。