劇団四季のミュージカル「キャッツ」が11月11日、静岡市の公演で初演から30周年を迎えた。ロングラン公演、オンラインでのチケット販売など、興行界初の試みを重ね、前代未聞の大規模公演を実現。これまでに9都市で約860万人を動員、公演回数は8600回を超えた。劇団幹部は「ミュージカルが大衆に定着した」と手応えを感じている。
失敗したら解散しよう
1953年に浅利慶太さんらが結成した四季は、創立30周年を前に岐路に立っていた。当時はシリアスな舞台になかなか客が集まらず「劇団員は皆、ノルマのチケットを売ることに疲弊していた」(四季幹部)。
そんなとき、浅利さんがロンドンで見たのが「キャッツ」だった。都会のごみ捨て場で自由に生きるネコたちの物語に「これは当たる。勝負の時が来た」と上演に動きだした。
だが、大掛かりなセットの設営には時間もお金もかかる。実現にはロングラン公演が必須条件。1カ月ごとの貸し出しが常識だった既存の劇場では対応できないため、東京・新宿に仮設劇場を建てることになった。
劇場建設費などの初期費用を試算すると半年で約10億円と、それまでの1カ月公演の約50倍に。「失敗したら解散しよう」と劇団総会で決定。テレビ局と共催し、食品会社から協賛を受けてリスクヘッジをした。