伊豆大島で多数の死者・行方不明者を出した土石流は、どのように発生し、どう流れていったのか。現地入りした専門家らは、山肌の表面が崩れ落ちる「表層崩壊」で発生した土石流が上流域を直撃した後、さらに豪雨で生じた激流が下流域にまで達する形で、2段階で被害が拡大したと分析。その爪痕の激しさから「山津波」との表現もなされた。
巨木をなぎ倒す
「表層崩壊。そう呼んで間違いないと思う」。土木学会の緊急現地調査団の一員として10月18日に三原山の登山道に立ち入った東京大学の島村誠特任教授(59)=防災工学=は、6カ所のえぐり取られたような跡がある無残な山肌を見るなり言い切った。
登山道がある崖から見下ろすと、全長約2.5キロの「大金沢」と呼ばれる沢が被害の出た神達(かんだち)と元町3丁目の両地区を通り、海へと続いているのが分かる。土石流はこの沢に流れ込み、周りの無数の巨木をなぎ倒しながら麓へ向かった。
調査団は、その間に2段階で被害が拡大したとのシナリオを描いた。