「何でもあり」という名の、底抜けに明るいミュージカルが、帝国劇場(東京)で上演中だ。ブロードウェー黄金期の1934年初演の「エニシング・ゴーズ」で、日本では17年ぶりの再演。「ミュージカルコメディーは、未来を無邪気に見通せないとき必要とされ、倉庫の中から取り出されて、人々の心に火をともす」と、演出の山田和也(51)は言う。随所にちりばめられた軽快で華やかな歌やダンスは、憂鬱な気分をぱっと吹き飛ばすような勢いにあふれる。
エニシング・ゴーズは、豪華客船を舞台に、ウォール街で働くハンサムなビリー(田代万里生)と、親が決めた婚約者がいる令嬢ホープ(すみれ)の若い2人の恋を軸に、個性あふれる乗客たちが繰り広げる恋愛や騒動の数々を、コミカル、時にロマンチックに描き出す。
迫力のダンスシーン
初演は、ちょうど米国が恐慌の底からはい上がりかけたころ。当時のプロデューサーが、債権者から逃れようと「船」で逃げる最中に、この作品の構想を得たとの説もある。だとすれば逆境から生まれたコメディー。「転んでもタダじゃ起きない演劇人の性ならではでしょう」