ドイツのアンゲラ・メルケル首相(59)は「現実主義者」として国内では評判が良い。しかし、ドイツの「現実主義者」は、国益のためには何でもする。化学兵器で千数百人を殺害した可能性が濃厚なシリア問題で氏は8月、バラク・オバマ米大統領(52)と「重大な国際法違反」だと確認し合った。だが、ドイツにも「国際法違反」の嫌疑がある。独経済技術省による9月18日の発表は衝撃的だった。
シリアへ化学物質輸出
「2002~06年にかけ、シリアに化学物質のフッ化ナトリウムやフッ化水素アンモニウムを100トン以上輸出した。民生用として許可したが、神経ガス・サリン製造の原料にもなり、化学兵器への転用が可能だ」
旧東独科学アカデミーで化学担当だった物理学博士のメルケル氏は「8月21日の攻撃に使われた証拠はない」と表明したが、疑惑は深まった。独公共放送は9月30日「輸出は1998~2011年にかけてで、量は350トン。シリア政府軍が反体制派デモを徹底弾圧し始めた時期と重なる」と報じた。政府発表・報道ともに、輸出がメルケル氏首相就任の2005年11月以降も行われていた事実を裏付けた。氏はオバマ氏に「国連が責任を果たすべき」とも伝えたが、調査「責任」はドイツにもある。