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イランとの対話路線 不透明さに懸念

2013.10.1 10:52

 【アメリカを読む】

 バラク・オバマ米大統領(52)は9月27日、イランのハサン・ロウハニ大統領(64)と電話会談した。1979年のイラン革命と米大使館占拠事件後の国交断絶以来、首脳同士の接触は初めて。両首脳は信頼関係構築の重要性で合意し、中東の安定化につながるとの期待も出ている。オバマ政権はマフムード・アフマディネジャド前大統領(56)の再選以降、経済制裁強化などを打ち出してきたが、今年6月の大統領選で保守穏健派のロウハニ師が勝利したことを機に対話に転じる姿勢を明確にした形だ。しかしイランが核開発の透明性向上にどう取り組むかは不透明なほか、これまでテロ組織への支援を続けてきたイランとの関係改善に懸念を示す向きもある。

 歴史的な電話首脳会談

 オバマ氏は27日、ロウハニ師と約15分間にわたって電話会談した。オバマ氏は会談後、ホワイトハウスで記者団に対してイランの核開発問題について話したことを明かし、「包括的な解決策に到達できると信じている」と述べた。またオバマ氏はロウハニ師が核兵器の開発を行わないと明言していることに触れ、「イランの人々が平和的に核エネルギーを利用する権利を尊重する」と改めて強調。米国とイランの関係修復はイラン国民の利益になるだけでなく、中東に平和と安定をもたらす可能性があるとした。

 1979年1月に親米のパーレビ政権がイラン革命で倒れ、米国がパーレビ元国王(1919~80年)のガン治療を目的とした入国を認めると、これに反発した学生らが元国王の身柄引き渡しを求めてテヘランの米大使館を79年11月に襲撃・占拠。52人の米国人を人質にとって444日間にわたって立てこもった事件で両国関係の悪化は決定的となり、翌80年4月に国交が断絶した。今回のオバマ氏とロウハニ師の電話会談で、首脳同士の接触が30年以上の時間を経て実現したことになる。

 ロウハニ師に期待

 オバマ氏は2009年1月の政権発足当初、イランとはアフガニスタンの安定化などで協力できるとして対話姿勢を示していた。09年3月に発表したイラン国民に向けたビデオメッセージでは、「両国は人間性という共通の絆でつながっていることを思い起こすべきだ」と述べ、「建設的な関係」の構築を目指すことを表明。米国の外交官がイラン側と接触することへの制限を緩和するなどの取り組みも進めた。

 しかし09年6月にアフマディネジャド氏が大統領再選を果たし、選挙に不正があったとする抗議デモとの対決姿勢を示したことを機に、オバマ政権はイランとの対話姿勢を維持できなくなる。その後はイランの核開発継続を理由に経済制裁を段階的に強化。イラン経済に物価上昇などの深刻なダメージを与えた。こうした経緯にも関わらず、オバマ氏がイランとの関係修復にかじを切ったのは、保守穏健派として大統領選に勝利したロウハニ師の対話路線に望みをつないだ形だ。

 時間稼ぎの策略か

 ロウハニ師は9月24日の国連総会での演説で、「核兵器開発はイランの国防指針にない」と明言し、イランの核問題をめぐり米欧と「結果の伴う迅速な対話の用意がある」と強調した。米メディアの取材にも積極的に応じ、ツイッターでメッセージを公表するなど柔軟ぶりをアピールしている。

 また26日には、国連安全保障理事会の5常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランの外相がニューヨークで会談し、イランの核問題について10月15、16日にジュネーブで実務者協議を行うことで合意。各国からは「大きな進展があった」との前向きな評価が相次いだ。会談後にはジョン・ケリー米国務長官(69)とイランのムハンマド・ザリフ外相(53)が個別に話し合うなど、具体的な関係作りも進められている。

 ただしオバマ政権はイランの対話姿勢が本物かどうかを見極めかねている。米国はこれまでにウラン濃縮活動の停止などの措置を求めてきたが、イランがこうした要求にどのように応じるかは明確でないからだ。

 またイランはサウジアラビア、クウェートなどを親米国家とみなしてテロ活動の標的としてきたほか、イスラエルを敵視する政策をとり、イスラム教シーア派組織ヒズボラやイスラム原理主義組織ハマスに対する武器供与や資金提供を行ってきた。米国は1984年にイランをテロ支援国家に指定し、2002年にはジョージ・ブッシュ前大統領(67)がイラン、イラク、北朝鮮の3カ国を「悪の枢軸」と呼んで対決姿勢を強めている。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(63)はロウハニ師の対話姿勢について「対話の間に核兵器開発を進めようとするイランの策略だ」と糾弾。米政府高官も、イランは対話姿勢が本物であることを「行動で示す必要がある」としている。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS

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