足の甲にできた湿疹をこじらせた。もともとは靴ずれが原因だった。外出するのに靴を履かないわけにはいかないから、無理して歩き続けるうちに悪化。ついに患部が甲の3分の1くらいに広がるに至り、病院行きを決意した。
初めて訪れた皮膚科クリニックで、感じの良い女医さんは「痛いでしょう。かゆみも強そうですね」と同情(?)してくれた。しかし、当の本人は「そんなでもないです」。一般的に、女性の方が痛みに強いというけれど、どうやら私は、かゆみや痛みのものさしがずれているらしく、よく言えば我慢強く、悪く言えば鈍い。
「これはひどいですよ」と女医さんもあきれるなか、思わずもれた言葉は「病院に行くのが怖くて」。小学生か、と自分に突っ込みながら、指示通りに処方薬を使ったら、症状はみるみる好転した。
残念ながら、現代の最新技術をもってしても、他人の感覚を正確に測ることはできない。痛みひとつ取ってみても、ある人は「1」の痛みを「10」と捉え、ある人は「10」の痛みを「1」と捉える。そして、他人の感覚を正確に知ることができない以上、「何が正しくて何が間違っているのか」「何が正常で何が異常なのか」といったあらゆる基準も、実はとても曖昧だ。