68万5000円をもらった室井の、外務省での手取りは月1万5000円。外務省職員・庄田正(故人)の長男(55)が住む17.25坪の木造平屋(東京都目黒区)が22万6500円(29年度評価)だった時代である。
この家を報酬で建てたか否かは公判での争点の一つとなったが、300万円を供された米軍施設工事請負会社幹部・大田吉蔵は、その内の140万円で12坪の別荘を建て、120坪のアパートを購入している。
京都に引き揚げ船で着いた元陸軍中佐・是枝重信(83)は5日後、都内の墓場で2時間かけて埋没場所を探し、密封缶入りの支度金5万円をつかんだ。
4年の抑留から祖国に生還した大本営陸軍部対ソ作戦主任参謀だったエリートが、食うや食わずで待っている妻と小学生の息子2人のため墓場をあばく姿を想像するのは、悲しかった。(政治部専門委員 野口裕之)