憧れのポルシェ、維持費高すぎてショック! 想定外の出費が次から次へと…

2016.7.3 17:10

 20年前の車 年間維持費が180万円!

 モノを買ったら、それでおしまいではない。

 たいていその後に「維持費」がかかる。これをバカにして、あるいは維持費に無頓着で自分の首をしめる例があとをたたない。それは、夫婦ともに収入が高い、家計的には何の問題もないと思われる世帯をも直撃する。

 例えば、こんな事例がある。都内に住む会社役員のAさん(52歳)は、ずっと欲しかったポルシェ911を手に入れた。バリキャリで働く妻(49歳)が結婚20年の記念にとプレゼントしてくれたのだ。

 ここ数年、Aさんが探していた型式のものは、日本国内にある台数自体が少ない上、数年前から価格が上昇。専門ディーラーを回っていても、ここ2年で200万円は確実に上がっている。どうやら、世界的にスポーツカー相場が高騰しているようで、海外に比べて相対的に安かった日本の市場にも影響を及ぼしているのだそうだ。

 そんなとき、たまたま見ていた中古車サイトで希望の車種が売りに出されているのを見つけた。しかし1995年式で車体価格だけでも約800万円。これにさらに諸費用がかかる。

 「このご時勢に、20年以上もの前の中古車がこんなに高いなんて」

 そう驚きあきれながらも、妻に相談すると、「欲しいなら決めちゃえば?」とあっさりとお金を出してくれたそうだ。太っ腹な妻である。結婚記念日に何かをもらおうとする女性は多いが、800万円ものプレゼントを夫にするなんて……。よほどの経済的ゆとりと夫への愛情の持ち主である。

 しかし、ポルシェオーナーになった喜びもつかの間。次々とショッキングな事実がAさんを襲う。想定外の出費が次から次へと発生したのである。

 月額15万円の維持費に「目が点」

 まず、納車前に任意の自動車保険を契約しようとしたところ、保険料が割安なネット損保では車両保険が付けられなかった。なぜなら、一般的にネット損保では、車両保険について、以下のような車について引受を制限しており、Aさんのクルマは、この制限に引っかかってしまうからである。

 ・初度登録(検査)年月から一定年数(18年など)以上が経過している

 ・車両保険金額が1000万円を超える

 ・車両料率クラス(※1)が9

 ※1:自動車保険の車両保険の保険料を算出するための基準として設定された区分。1~9まであり、料率クラスが上がるほど保険料が高くなる。

 このほか、ネット損保の中には「会社が指定するスポーツカー」という制限を設けているところもあり、Aさんは、割安なネット損保を諦めざるを得なかった。

 結局、ディーラーが紹介してくれた自動車保険に加入したが、新規契約でノンフリート等級(※2)は6等級となり、保険料は年間約30万円もかかる。ある程度予想はしていたものの、まさかこれほど高いなんて。来年以降、等級があがれば多少は安くなるだろうが、それでも通常の自動車保険に比べると断然高い。

 ※2:保険料の割引率および割増率を算出するための階級。1~20等級に分かれ、事故を起こさず保険を使わなければ翌年の等級があがって保険料は安くなる。

 タイヤ交換もすることになった。20万円以上かかった。さらに聞くところによると、ポルシェは運転が難しいため、メルセデス・ベンツやBMWなどから乗り換える人は、事前にポルシェ専用のドライビングスクールに通うのだそうだ。この費用が15万~20万円。

 また全国にあるポルシェクラブに入会すると、各種のイベントなどに参加できるが、入会金や年会費などの会費や活動費で5万~10万円がかかるという。

 もちろん毎月の駐車場代、ガソリン代、自動車税・自賠責保険・重量税といった税金・保険料関係の費用、車検代などのコストは必要だ。

 自動車にまったく興味がない妻は、購入後のクルマのコストに関しては「我関せず」で、自分で負担するようにと言われている。夫はお金がかかることは覚悟していたものの、実際にこれだけ次々と費用がかかることが分かってくると、ため息が出るばかり。

 とはいえ、実際に乗り始めると、ポルシェに乗る喜びには変えられない。喜々としてドライブに出かけたAさんだったが、納車して1カ月も経たないうちに、肝心のポルシェが故障。早々に購入したディーラー先へ修理のために戻ってしまった。

 ポルシェは消耗品などのパーツも高い。修理は、納車直後のものだったので、無料だったが、見積もりでは約10万円だった。そんなAさんがこれから1年間にかかる費用をざっと計算してみると、約179万円。月額にすると約15万円にものぼることが判明した。また初年度ほどではないにしろ、2年目以降も、故障やら何やらでかなりの額になることは目に見ている。

 年間180万円! 想定外の維持費「内訳」

 Aさんは、高収入な共働きで子どもがいないDINKSカップル。だからこそ維持できる可能性も高いだろうが、通常のご家庭では、とても負担できる金額ではないだろう。

 ▼1年間で、Aさんがポルシェにかかるコストの目安

 ・自動車税:7万円

 ・自賠責保険(年間):2万円

 ・重量税(24カ月):1.5円

 ・自動車保険(任意):30万円

 ・購入時の手続き費用等:6.5万円

 ・駐車場代(年間):24万円

 ・ガソリン代・高速代(年間):30万円

 ・車検代(年間):8万円

 ・タイヤ交換:20万円

 ・オイル交換:5万円

 ・修理代・1年点検:20万円

 ・専用ドライビングスクール:15万円

 ・クラブ入会費用:10万円

 合計:179万円

 ポイントは、購入前にあらかじめ予想できていた費目もあるが、ノーマークの費目がかなり多いということだ。買ってみて、わかった費目。これがくせ者なのだ。

 Aさんの高級車の事例を挙げるまでもなく、マンションや別荘、クルマやペットなど、購入金額以上に保有するコストの方が負担が大きいものは少なくない。

 例えば、新婚カップルなどからマイホームについてのご相談を受けることも多いが、みな口を揃えて「賃貸物件の家賃を払っているのがもったいない。同じくらいの住宅ローン返済なら、早くマンションを購入した方がオトクでは?」という。

 答えは「NO」--もちろん、きちんと自己資金を貯め、心に決めた物件がすでにあるというのであれば話は別だが、多くの場合、安易に考え過ぎだ。

 マンション「維持費」が原因で家計破たん

 賃貸と購入は、家賃と住宅ローンだけを比較すると同程度の金額かもしれないが、年間コストに換算すると大きな開きがある。賃貸の場合、家賃以外にかかるお金といえば、毎月の共益費と2年に1回などの更新料(家賃1カ月分など)くらいだろう。

 それに対して、マイホームの場合、住宅ローン返済以外に、次のようなコストがかかる。 特に固定資産税・都市計画税について、おおまかな目安は、物件価格が一般的な4000万円の新築住宅であれば、一戸建ては約15万~18万円、マンションは約20万~23万円と、マンションの方が高くなる。地価の高い東京都内の1億5000万円の高層マンションでは、35万円という事例もある。

 また、同じようにマンションの場合、管理費について、駅近で戸数規模が多い高層マンションなどは共有部分が豪華な設備になっていることも多く、通常のマンションに比べて平均1万~2万円は高くなる。トータルで考えるとこれもけっこう大変だ。

 マイホームに関する維持費は前出の高級車に比べれば、事前に把握できる費目も多い。しかし、賃貸時代にはなかった費目が年間数10万円単位で発生すると、ほとんどの人は、「え、こんなに高いの?」と動揺してしまう。

 とりわけマイホームは多額で長期のローンを抱えるだけに、これらの見積もりを甘くみると、家計が破綻しかねない。実際に、自己破産した人の破産理由をみると、「住宅購入」は2008年の調査以降、増加傾向にあり、2014年調査では、全体の約16%も占めている。

 また、破産した際の負債額の平均は約2414万円だが、破産債務者の半数近くが負債額500万円未満となっている(2014年日弁連破産事件及び個人再生事件記録調査より)。失業や給料の減少によって、住宅ローンが払えず破産せざるを得ない状況が、より深刻になっているということの表れだろう。

 何かを購入した後の思わぬ維持費の大きさに、生活が破綻しかねないのであれば、「持たない」という選択肢を選ぶのも一手だろう。

 40万円の犬の年間維持費は30万円!

 額は高級車やマイホームに比べて小さいが、ペット購入も意外に維持費が大変だ。

 Bさん(49歳男性・テレビ局勤務)はこの春、中学受験で合格した娘のお祝いとして、トイ・プードルを買った。生後2カ月ということもあり、値段は40万円とちょっと高め。それでも、「勉強を頑張った娘へのご褒美、兼、娘を支援した妻へのねぎらい」と奮発した。が、出費はそれだけではすまなかったのだ。

 自宅内の犬用のゲージ、ドッグフード、狂犬病予防の注射などはもちろん想定していたものの、それだけで月1万円は軽く飛ぶ。さらに、合わせて年間10万円のペット保険2件に加入した(生後間もない犬なので、病気になるリスクも成犬より高いと説明されたため)。

 加えて、季節ごとにペットトリミング代各6000円、ペット病院代など、低く見積もっても年間でトータル30万円はかかることがわかり、Bさんは青ざめた。月平均2万~3万円の新規の出費項目は、痛い。「生き物を飼う(買う)ことは、大変なことなんだ。やめとけばよかった」と嘆くのだ。

 しかし、それは後の祭り。かわいい犬は、すでに家族同然。もろもろのコストをカットできるはずもない。前出の高級車、マイホーム、そしてペット……。買う決断は、くれぐれも念入りな「維持費」調べをしてからにしたほうがよいのだ。

 (ファイナンシャル・プランナー 黒田尚子=文)

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