一人親家庭の教育資金 早めの準備、国や大学の「支援策」活用を

2015.12.6 07:15

 11~12月は多くの私立大学で、推薦入試の選考、合格発表が行われている。だが、配偶者のいない一人親家庭では、経済的な理由で高校以降の子供の進学をあきらめるケースも少なくない。国や自治体、大学などが行うさまざまな支援策を活用し、親子で十分に話し合って努力することで、夢をかなえる道を探したい。(戸谷真美)

 就労収入年181万円

 11月初旬、東京・四谷でシングルマザーを対象にした「教育資金準備セミナー」(NPO法人、しんぐるまざあず・ふぉーらむ主催)が開かれた。首都圏から24人の母親や子供たちが参加した。

 参加者の一人で都内に住む40代の相川美佐恵さん=仮名=は「できれば息子の希望通り、医療系の大学に行かせてやりたい」と打ち明けた。長男の拓真さん=同=は今、高校1年生だ。国立大医学部なら6年間の学費は約350万円。私立では平均2千万~3千万円にもなる。今の生活も楽ではない。だが「私自身、高校から奨学金を受けて大学まで行った。大変だったが、進学して得るものにはお金に換えられない価値がある。だから子供にもできる限り、上の学校に行かせてあげたいんです」と美佐恵さんは言う。

 厚生労働省のまとめによると、母子世帯の平均就労収入(平成22年)は年181万円。父子世帯でも360万円で、男性全体の平均給与所得(同年、507万円)を大きく下回る。一人親世帯の子供の大学・短大進学率は23・9%で、全世帯平均の半分程度だ。

 奨学金、ローン利用

 セミナーで講師を務めたファイナンシャルプランナー、新美昌也さんは「特に離婚などで突然一人親になった人は、最初から『大学なんて無理』と思ってしまう人が多い。でも、お金だけを理由に進学をあきらめる必要はない」と話す。

 まず奨学金は、(1)返済不要の給付型(2)無利子の貸与型(3)低利子の貸与型-の順で検討する。(1)は神奈川大の給費生試験制度や電通育英会の奨学金など、各大学や企業のものが代表的だ。(2)、(3)は、日本学生支援機構の第一種、第二種奨学金などがそれぞれ該当する。

 また、自治体には「母子父子寡婦(かふ)福祉資金貸付金」がある。〔1〕入学金などの「就学支度資金」〔2〕授業料や通学費といった「修学資金」があり、〔1〕は国公立大で38万円、私立大で59万円が上限。〔2〕は在学中に月額4万5千円~6万4千円が貸与される。いずれも無利子で償還期間は最長20年だ。いつでも申し込める日本政策金融公庫の国の教育ローンは、子供1人につき限度額350万円。返済は18年(一般家庭は15年)以内、年1・65%(同2・05%)の固定金利で、郵送やインターネット、最寄りの金融機関も窓口になっている。

 新美さんは「日本学生支援機構の奨学金は第1回の振り込みが入学後の4~6月。だが私大では、合格後1、2週間で入学金や前期授業料など70万円以上を納めなければならず、奨学金では間に合わない。特にAO、推薦入試は、高3の秋には決まるので早めに準備して」とアドバイスする。

 親子で認識を共有

 拓真さんのように、医師や看護師など医療・介護系の仕事を目指す場合は、自治医科大医学部(栃木県)や東京都の看護師修学資金など、卒業後の一定期間、指定の医療機関に勤務することを条件に、学費や奨学金の返済免除制度がある場合もある。セミナーの後、美佐恵さんは「相談の窓口も分からなくて不安でしたが、少し希望が見えた。息子と話し合って一番いい道を選びたい」と前を向いた。

 新美さんは「子供と十分話し合い、希望や現状を共有すること。そのうえで早め早めに動くことが大切」としたうえで、「奨学金や教育ローンも借金なので慎重な検討が必要。だが、うまく活用すれば将来への有効な投資になる。高校や大学、自治体などで十分な情報収集をしてほしい」と話している。

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