2015.5.28 20:00
俳優の今井雅之さん(54)が末期の大腸がんであることを告白してから、わずか1カ月。復帰に意欲を見せていただけに、今井さんの訃報の衝撃は大きい。大腸がんは、日本人男性の11人に1人がかかるといわれる身近ながん。初期はほとんど症状が出ないだけに、医師からは早期発見の大切さを訴える声が上がっている。
自覚症状出ず
大腸がんは、大腸の内側の表面にある粘膜に発生する。食の欧米化などにより近年増加傾向にある。国立がん研究センターの平成23年のがん登録データから推計すると、生涯で大腸がんに罹患(りかん)する確率は男性が11人に1人、女性が14人に1人だ。
がん研有明病院消化器センター大腸外科部長の上野雅資医師は「年齢が高いほど罹患しやすい」と指摘する。40代後半から増加し、がん研有明病院で手術を受ける人の平均年齢は60代前半だという。
大腸がんになると、便に血がついたり便秘になったりするほか、腹痛などの症状が表れるが、初期にはほとんど自覚症状が出ない。症状の表れ方はがんができた場所によって異なる。肛門から遠い場所にできると、症状が表れづらい。
大腸がんの進行度は、がんが大腸の壁に入り込んでいる程度と、リンパ節や肝臓などほかの臓器の転移などから判断する。ステージIからIVまでの4段階ある。症状が出るのは、ステージII以降が多い。
今井さんは昨年の11月に病院で、検査を受けたところ、ステージIVの大腸がんだと診断されたという。切除手術を受けた後、抗がん剤治療を受けていると会見で明かしていた。
ほかの臓器への転移が見られるステージIVだと、同病院での5年生存率は、3割程度とされているが、転移の数が限られている場合などは、治癒する可能性はあるという。
転移する場合には、肝臓や肺が多い。大腸がんは進行が遅く、早期から転移が進むことはないため、上野医師は「早期に発見できればほとんどの場合、治癒できる」話す。
40歳以上は定期的に
大腸がんが疑われる場合には、消化器科を受診する。診断には、内視鏡を入れて大腸内を観察する「内視鏡検査」が行われる。がんと疑われる場合には、病変の一部を採取し、病理検査で組織を調べる。
早期発見に有効なのは、大腸がん健診の「便潜血検査」だ。便のなかに混ざっている血液を検出する。無料で受けられる自治体もある。上野医師は「早期発見のためにも40歳以上は潜血検査を受けてほしい」と話す。
再度、受診を
今井さんの場合は、異変を感じた昨年夏頃に、都内の病院を受診し「腸の風邪と」と言われたという。
大腸がんなど、消化器疾患に詳しい神奈川県横須賀市の診療所「マールクリニック横須賀」院長の水野靖大医師は「『おなかが痛い』などと受診する患者の多くは、風邪などによる急性胃腸炎で数日でよくなる。その中には一部には、がんが含まれるが全員に、内視鏡やバリウムを使ったがんの検査を勧めることは難しいのが実情」と明かす。
「薬を飲んで4~5日しても治らない場合は、検査のために必ず再度、受診してほしい。痛みが出ている大腸がんでも、治療により克服できるケースも多い」と水野医師。
今井さんについては「がんの痛みは強い。4月の会見もつらそうだった。最期の最期まで、ぎりぎりまで頑張られたのだと思う」と推測した。