「昆虫」食べてみた…めっちゃうまい 「お母さん、コオロギいっぱい入れて」

2014.3.16 12:02

 身近に生息する「昆虫」が、「食糧」として注目されている。高タンパクでビタミン豊富など栄養面で優れている上、飼育に手間がかからないといった点が評価され、各地で専門家によるセミナーが開催。昨年には国連食糧農業機関(FAO)が人口増加に伴い「昆虫食が人類の食に貢献する」という報告書を出している。将来訪れうる「昆虫食時代」を見据え、とにかく実際に食べてみようというイベントが開かれると聞き、参加してみた。(佐々木詩)

 先月22日、大阪市鶴見区の市立環境学習センターの一室。親子連れら約50人が、三角巾にマスク、エプロンといういで立ちで集まっていた。テーブルの上に置かれたのは、大きな2つのボウル。

 1つには黒くつややかにひかるコオロギたち、もう1つのボウルにはゴミムシダマシの幼虫「ミルワーム」。ごそごそと動く生きの良い虫に、「イヤーー」と悲鳴を上げる母親たち、その横で、男の子たちはさっそく手で触ったり、つまんだりと興味津々。

 同センター主催の調理実習イベント「ムシ食い三昧!」が始まった。

 「さあまずは、ムシを素揚げしますよ」と同館のスタッフが朗らかに説明する。生きたままのコオロギとミルワームを熱した油に落とすというのだ。お母さんたちが意を決したような表情で、手でつまんだコオロギを油の中にポトリ。ジュワーッと気泡が広がる中、コオロギが次々と空揚げされていく。

 揚げたばかりのコオロギに塩を振り、全員で口へ…「めっちゃうまい」「エビみたいや」。私も思いきって口へ。カリッとした食感。そして噛むほどに濃厚なうまみが口中に広がる。確かにエビの空揚げを食べている感覚と同じだ。いける。

 外はサクッ、中はトロリのミルワーム

 ミルワームも食べてみる。外はサクッと、中は少しとろっとした食感。こちらもおいしい。子供たちには「こっちのほうがコオロギよりおいしいな」と人気だった。

 不思議なことに、最初、悲鳴を上げていた母親たちも、覚悟を決めたのか、コオロギも食材だと割り切ったのか、野菜や魚を天ぷらにするかのように、平然と揚げていく。

 さらに、この素揚げのコオロギとミルワームを使い、みんなでチャーハンやピザ、クッキーなど5種類の料理を作って試食した。チャーハンをよそう母親に「お母さん、コオロギいっぱい入れてや」とねだる子供。私もコオロギ山盛りに、と言いかけた自分に驚いた。

 この日の講師を務めたのは、大阪国際大准教授、西岡ゆかりさん。「虫はおいしい」と訴えている栄養学が専門の研究者だ。「虫というと大人には先入観がありますが、子供にはありません。子供のうちに虫が食べられるということを知るのはいいことです」と話す。「食べることができると思うだけで災害時に受けるストレスが違ってきますからね」。

 栄養価の高い昆虫

 今回使った虫はペットショップでエサとして売られていたもの。養殖されたもので「グラム単位で計算したら松阪牛より高価」(西岡准教授)という高級品であり、衛生面などにも十分に注意が払われている。

 だが、もし、自宅周辺で捕まえた虫を食べるという事態に直面した場合は、西岡准教授は、一晩絶食させて脱糞させる▽基本的には火を通す▽毛虫などは毒毛を持っていないか確認▽農薬が付着していることがあるので田畑で採取した虫は洗ってから使う-といった点を注意するようアドバイスする。

 西岡准教授によると、昆虫は高タンパクであり、ビタミンや食物繊維、ミネラルが豊富で栄養価が高い。さらに昆虫は摂取した栄養の40%を体質量に変換できる。魚であれば10%、牛は1~3%であることを考えると、生産効率がいい食糧源とも言われている。

 また、昆虫食は災害時の食料として重要なだけではない。国連食糧農業機関(FAO)は昨年5月、今後の人口増加と中間所得層のタンパク質需要の増加などにともなう環境への影響などから、従来の家畜や飼料の替わりを見つけることが急務とし、世界の昆虫食の現状をまとめたうえで、食用昆虫の活用が有益、との報告書を出している。西岡准教授は「すぐにスーパーに昆虫が並ぶ、ということはないですが、虫が食料になるという認識をまずは広めていきたい」と話している。

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