生活保護現金支給 「大切に使わんと」と言いながらパチンコで遊ぶ

2012.6.3 08:40

 人気お笑い芸人の母親が生活保護を受給していた問題をきっかけに、生活保護に対する関心が高まる中、全国最多の受給者を抱える大阪市で1日、保護費が支給された。口座振り込みが増え、現金で受け取る人は減少しているが、それでも住民のほぼ4人に1人が受給者という西成区では、早朝から約100人が区役所前で列をつくった。

 「大切に使わんと」。午前8時ごろ、列の前方に並んでいた無職男性(67)は、少しうれしそうに話した。

 30分後、区役所のドアが開くと、受給者らは先を争うように3、4階にある受付へ。この日は正規と嘱託合わせて約360人いる生活保護担当の職員が総動員で対応にあたり、「慌てないで」と声をかけながら、現金と明細が入った封筒を次々と渡した。

 男性は午前9時過ぎに約12万円の保護費を受け取ると、その足で不動産屋と郵便局を回り、家賃や光熱費で計約6万円を支払った。

 ところが、この後に向かったのはパチンコ店。「5千円までにしておかんと」と言いながら開店を待った。「負けても、ご飯を激安スーパーにすればいい」。

 庁舎内には、受給者だけでなく、名簿や帳簿のようなノートを持った貸金業者や不動産業者とみられる人たちの姿も。一部の受給者らはその場で封筒を開け、もらったばかりの保護費を手渡していた。

 金融業者を名乗る男性(61)は「今日は3人から1万円ずつ返してもらう。自分で稼いだ金ではないためか、すぐにパチンコなどに使ってしまい、また借りに来る受給者もいる」と話した。

 2008年のリーマンショック後、特に目立つようになったのは、若い受給者だ。金髪にグレーのキャミソール姿の女性(20)は無職の内縁の夫(34)と子供2人の4人暮らし。約20万円の保護費が唯一の収入源といい、「世間の風当たりが強くても、保護費がないと生きていけない」と訴えた。

 保護を受け始めて3カ月という男性(34)は「最近の芸能人をめぐる騒動で肩身は狭いが、なかなか安定した仕事が見つからない。14社面接を受けたが全部落ちた」と話した。

 西成区によると、6月分の支給額は約2万5千世帯分の26億9千万円。医療扶助はこれとは別に支払われる。9割以上が口座振り込みで、現金での支給は3年前の約5億円をピークに減少。それでもこの日、現金で区役所に用意された保護費は1700世帯分、1億9400万円に上った。

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