絶叫マシンで知られるテーマパーク、富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)は、人気のコースター「高飛車」での「ポニーテールお断り」を導入した。ジェットコースター「ド・ドドンパ」で、昨年12月から骨折などの人身事故が相次いだことから、有識者による第三者委員会の指導をもとに施設の安全面を見直し、他のコースターなどで前倒しで取り入れた。その狙いはどこにあるのか。
乗車時姿勢
「髪を結んでいる位置が高いので、ほどくか、下の方で結び直してください」
11月4日、ハイランドの休園日に報道陣向けに公開された高飛車の乗車前のチェックのデモストレーション。運営オペレーターが、ポニーテールの乗客役の女性スタッフに声をかける。乗客役は首の後ろで髪の毛を束ね直し、最終ゲートを通って乗車口に進んだ。また、別の乗客役は束ねていたポニーテールをほどいて乗車口に向かった。
昨年12月から今年8月まで、ド・ドドンパの乗客で頚椎圧迫骨折や胸部骨折などの負傷が相次いだ。しかし、ハイランドでは、稼働以前の外部有識者による施設確認を安全性確保の根拠としており、「事故とド・ドドンパとの因果関係は不明」という立場だ。
一方で、外部の意見を取り入れるため、大学教授や交通関係の有識者らによる第三者委員会を発足し、ハイランド全体の安全体制などの点検作業を始めている。その中で事故の原因の1つと想定されたのが、乗車時姿勢だった。
以前から乗車前のアナウンスや係員のチェックで、安全ベルト、ハーネスの着用と同時に、頭部をしっかりとヘッドレストに押し付けて、乗車中は下を向かないことを乗客に呼びかけていた。
しかし、アトラクションを楽しみにしている乗客がしっかり聞いていないことや、乗車中に恐怖心から前かがみ姿勢になり、ヘッドレストから後頭部を離し、頚椎などに大きな負荷がかかってしまう可能性を第三者委員会が指摘。安全性を確保するには、乗車姿勢を崩さないことを徹底する必要があると強調した。
ショー形式で注意喚起
ポニーテールやお団子ヘアをしている場合には、ヘッドレストに後頭部がしっかりつかない。けがにつながる可能性のある姿勢を残すことになり、改善が必要というのが第三者委員会の意見だ。
そのため「最大落下角度121度の最恐コースター」と銘打つ「高飛車」や「ええじゃないか」など、ヘッドレストが用意され、頭をくっつけることで安全性を確保するコースターで「ポニーテールお断り」を徹底させる指針を打ち出した。
同時に、アトラクションの入り口から乗車までの待ち時間や通路での注意喚起を強化。ポニーテールについても大きな案内板を設置し告知し、通路の途中や乗車口などで運営オペレーターがショー形式で乗客に直接呼びかけ関心を持たせる。スマートフォンなどの手荷物はポケットの中のものも含め乗車口近くのロッカーに預け、手ぶらになってもらうことを要請する。
対策前倒しで不安解消へ
ハイランドとしては第三者委員会の意見を反映させることで、アトラクションの安全性をアピールし、ド・ドドンパ事故の不安解消につなげる狙い。ただ、主力コースターであるド・ドドンパの事故原因は、国土交通省が調査中で最終報告には時間がかかりそうだ。同時に、この調査や対策が完了しなければ、来年登場させる予定だった第5のコースターの計画も流動的となる。
第三者委員会では「設備や機材さえきちんとしていれば安全は担保されるという『機械信仰』にとらわれている」と、ハイランドの安全に対する意識を批判している。ハイランドとして総合的な安全態勢確保をどう実践するかがカギとなる。(平尾孝)