生命保険文化センターがまとめた「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」が9月に発表されました。この調査は3年ごとに発表されており、仕事柄、更新のたびに介護費用や介護期間などを確認しています。今回の調査では、平成30年度の前回調査に比べて、介護費用は上がり、介護期間は延びています。
調査結果をご紹介します。介護が必要になってから発生した一時的な費用の合計額は、前回の69万円から74万円に5万円アップ、介護費用の月額は前回の7万8千円から8万3千円に、5千円ほどアップしています。介護が必要だった期間は、前回の54・5カ月から61・1カ月に7カ月ほど延びています。介護にかかった費用と介護期間をかけ合わせると、介護費用のトータルは、前回の約494万円から約581万円へと、87万円増えています。
その一方で、個人的に驚いたのは、老後生活や介護費用に対する経済的な備えについて、「大丈夫」だと答えた方が増えていること。具体的には「老後の生活資金に対する安心感と不安感」に関する質問と、「世帯主または配偶者が要介護状態になった場合の必要資金に対する安心感と不安感」に関する質問に対して、「非常に不安である」と「少し不安である」と答えた方が減り、「大丈夫」と「たぶん大丈夫」と答えた方が、過去の調査に比べて増えているのです。
調査の性格上、比較的、生活が安定している回答者が多いことが想像できますが、老後生活や介護費用を不安に感じない方が増えている現実からは、家庭間の経済格差の広がりを感じました。
介護費用について「不安はない」と答えた方はよいとして、不安を感じる方は介護の制度や費用負担について、元気なうちから調べることが重要です。介護が必要になった場合に、最期まで在宅で介護を受けるのか、施設へ住み替えるのかを考え、住み替えるとしたらいくらまでなら費用を払えそうかを計算しましょう。60代以上の方は、自分の収入や資産で払えそうな住み替え先を探し、歩けるうちに見学することもおすすめします。
(ファイナンシャルプランナー 畠中雅子)