情報収集を通じて経済に敏感になり、ビジネスの共通言語である会計の知識を習得し、分析し発表する(他者に伝える)。ここで養われた力は就活だけでなく、今後社会で生きるための糧となる。金融リテラシーというと、資産運用や投資と結びがちだが、これらの知識・能力の総体こそが金融リテラシーだろう。のめり込みすぎず、適度な付き合いが求められるが、時間とお金に多少余裕ができ、情熱も持ち合わせる若者が投資に熱中するのは、決して「靴磨きの少年」ではなく、長期の潮流の中では必然なのだ。コロナ渦は将来不安の増大とおうち時間の増加いう意味で、この長期的な潮流に拍車をかけたに過ぎない。
社会全体の潮流は
若者が投資に興味をもつという長期的な潮流を実現できたのは、社会全体としての後押しがあったことも大きい。政府や金融庁筆頭に「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、各種制度(NISAやiDeCoなど)が設けられ、金融界・証券界も応えるように後押しし、メディアもコンテンツの充実を図ってきた。2022年度から高校の新学習指導要領では、家庭科で資産形成の視点に触れるよう規定される。
未だに様々な不十分な点や問題点を抱えるが、諸外国と比較して、金融リテラシーや資産の投資割合の低さが指摘されるなかで、投資活性化に向け、社会全体として下地を整えてきた。学生の投資への興味関心を鑑みるに、一定の成果があったといえる。
しかしながら、岸田文雄首相は「金融所得課税」の見直しを検討する方針を示していた。詳細が決定していない以上、影響の範囲や大きさは不透明だが、社会全体で作り上げてきた「貯蓄から投資へ」という潮流に水を差しかねない発言と受け取れる。医療・年金制度維持の難しさを念頭に、自助努力を促すNISAやiDeCoといった制度さえ、それぞれ時限措置、凍結されている特別法人税などのスローガンや奨励制度とは裏腹に闇の側面もある。
まだなお、投資家=金持ち、労働が美徳で投資はけしからんといった風潮の根強さが垣間みえる。国策としての「国際金融都市構想」、USICのビジョンとしての「金融大国の実現」に狂いがないことを願う。是非、岸田首相には「聞く力」を発揮して我々の声にも耳を傾けて頂きたい。
■慶應義塾大学 八田潤一郎 (はった じゅんいちろう)
法学部政治学科2年 学生投資連合USIC代表:小学生の時に株式投資を始める。最近では、FX、不動産(REIT)、仮想通貨、コモディティ、債券、デリバティブを新たに運用しながら、毎日勉強中。金融を学ぶ「おもしろさ」、投資の「楽しさ」を多くの人に知ってほしいと願う。
【インタビュー協力】
■明治大学 清水優葵(しみずゆうき)
法学部1年 明治大学投資サークルBreakouts!:大学入学後、本格的に投資について学び始める。主に日本株を勉強中。投資と同時に政治経済についての知識も身につけ、身近な人に広げていきたい。
■慶應義塾大学 小川徳丸(おがわとくまる)
文学部1年 慶應義塾大学投資サークル実践株式研究会:大学入学を機に投資に興味を持つ。その後、投資系サークルや学生団体の存在を知り、現在、そこで出会った先輩や友人達と共に株を1から勉強中。投資を通して、世界に広がる様々な情報を「収集・分析・選択」していくスキルを高めていけたらと思う。
【学生から金融大国へ USIC通信】投資や金融に興味を持った切っ掛け、将来の展望やコロナ禍での学生生活の実情など、「学生投資連合USIC」に所属する各大学のサークルがリレー形式でお送りします。アーカイブはこちら