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コロナで深まる孤独 求められる周囲の「気付き」

 政府が2日、閣議決定した令和3年版自殺対策白書では、新型コロナウイルスの感染が拡大した昨年、特に働く女性や子供たちの自殺が過去5年間の平均と比較して増加したことが判明した。社会全体のつながりが希薄になる中、新型コロナによって孤独や孤立の問題は一層顕在化した。命を守るために求められるのは、周囲による早期の「気付き」だ。

 自己嫌悪、より強く

 「どうしようもない孤独感に襲われる」

 自殺に関する相談などに応じるNPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」(東京都豊島区)に9月、20代の女性から会員制交流サイト(SNS)を通じてメッセージが送られてきた。

 会社員の女性は新型コロナの影響で昨年から勤務が在宅に切り替わっていた。同僚と直接顔を合わせる機会がなくなり、不安を語り合える友人とも少しずつ疎遠になった。

 「感情をコントロールできず、夜になると涙があふれてくる。同居する家族にも心配を掛けている」。女性は心に抱える「孤独感」と、家族に迷惑を掛けているという「自己嫌悪」の感情を打ち明けたという。

 同法人の新行内勝善(しんぎょううち・かつよし)カウンセリングセンター長(52)によると、一般的に女性は男性より、強い孤独感と自己嫌悪といった感情を人間関係のストレスから感じやすい傾向にあるという。「(コロナ禍で)女性にとって大きなストレス発散となる友人との会話の機会も奪われた」。新行内さんは働く女性の自殺増加の背景をこう分析する。

 「人間関係を壊したくないとの思いから、家族や友人に対して無理して明るく振る舞う女性もいる」と新行内さん。「家族であっても、女性が追い詰められていることに気が付かないことがある。まずは、気付くことが大切。その上で、悩みを聴いたり家事を分担したりしてほしい」と訴える。

 日々の変化に寄り添い

 子供たちを守る防波堤となるのも、周囲による“気付き”だ。不登校などの比較的大きな変化はもちろん、子供の心の日々のちょっとした移ろいに、教員など周囲の大人たちがどう寄り添うのかがカギとなる。

 文部科学省の有識者会議は今年6月、「コロナ禍で、家庭や学校の支援機能が低下している」と分析した上で、情報通信技術(ICT)の活用を提言。ほぼ全ての小中学校に配備が完了した1人1台の学習用端末を使い、子供一人一人の日々の精神状況の変化に気づくことができる仕組みづくりを求めている。

 兵庫県内のある小学校では、学習用端末に民間企業が開発した「心の天気」というソフトを搭載。子供のストレス変化の把握につなげている。

 毎朝、児童が登校後に学習用端末を通じて、その日の気分を「晴れ」「曇り」「雨」「雷」の4つから選択して入力。入力結果が教師に集約されるため、児童の内面の「天気の変化」を日々読み取ることが可能になる。こうした記録は、子供のSOSの訴えに加え、「心の成長の把握にもつながる」という。(桑波田仰太、大泉晋之助)

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