長い新型コロナウイルス禍で、観光業界は大きな影響を受けた。だが、最近になって新規感染者の減少傾向が続き、政府の観光支援策「Go Toトラベル」は再開へ向け、準備が進んでいる。再開を前に県内旅行で地元の観光を盛り上げようと、自治体は「県民割」など独自のキャンペーンを打ち出し、政府もバックアップしている。(橘川玲奈)
観光庁は、「地域観光事業支援」として、都道府県が独自に県内旅行を支援する事業に対し、補助金を交付している。政府の対策分科会の指標で「ステージ2」相当であることや、県内旅行に限ることなどを条件に、宿泊費や土産物店などで使える「地域クーポン」を1人1泊あたり最大計7千円を補助。日帰り旅行に対しても支援する。
事業は今年4月に始まったが、当初は新型コロナの「第5波」の影響などで下火に。だが、10月に入り、実施する自治体が急増した。今月18日時点で42道府県への交付が決定され、36県でキャンペーンが始まっている。
栃木県はこの事業を利用し、県民の県内旅行を支援するキャンペーン「県民一家族一旅行」の予約を16日から開始。15日に県独自の感染指標で、5段階の下から2番目のステージに下がったことを受けた。
キャンペーンでは、宿泊費最大5千円の割引や地域クーポン2千円を付与。日帰り旅行も旅行代2千円を利用客に補助する。県の担当者は「出足は好調。キャンペーン開始前の5倍ほどの旅行申し込みがある代理店もある」と話した。
一方、沖縄県では感染が収束せず、独自のキャンペーンを始められないでいる。県は独自策の「おきなわ彩(さい)発見キャンペーン」を企画するが、12日時点で入院率はステージ4。ステージ2まで落ち着くのを待つ。
担当者は「11月には始められるよう準備している」というが、「まだ感染が落ち着いていない。いまは積極的に広報できない」と話した。
東京都も支援事業を行えない状況だ。だが、都は旅行業者などの経営状態はギリギリとみており、独自の支援事業についても、政府の制度の枠組みが固まるなど「やれる状況になれば1日でも早くやりたい」(担当者)と前向きだ。その際、事業者に混乱なく導入できるため、昨年実施した支援事業と同様の枠組みでのスタートを検討しているという。