「今年中に生前贈与をしたい」と、ある相談者から持ち掛けられました。その方が焦る理由は、相続税と贈与税を一本化する案が議論されているからです。相続税と贈与税の一本化では、毎年110万円までは贈与税が課せられない暦年贈与の制度を廃止することや、現行では相続開始前3年の贈与分が相続財産に加算されているのを、相続開始前10年や15年に延ばすことなどが検討されています。
税制改正の行方はわかりませんが、相談者が焦る気持ちも理解できます。資産に余裕のある方なので、「310万円の贈与を検討してはいかがですか」と伝えました。その理由として、310万円から基礎控除の110万円を引くと、残りは200万円になります。贈与税の税率は200万円までが10%ですので、200万円の10%に当たる20万円の贈与税を支払えば、310万円の資金移転ができます。暦年贈与が廃止されれば、この方法も意味はなくなりますが、少なくとも今年はできます。相続財産に加算される贈与分が3年分より長くなる可能性を考えても、早めに実行するのがよいでしょう。
また、保険商品を利用して、贈与をおこなう方法もあります。一例として、太陽生命が大和証券を窓口として販売している「マイ贈与(米ドル・豪ドル)」を利用する方法をご紹介します。マイ贈与の正式名称は「無配当通貨指定型生存給付金付特別養老保険」です。親が契約者と被保険者となり、子供を生存給付金と満期給付金の受取人にできる保険です。加入可能年齢は、給付金の受け取り回数によるものの、最高で90歳まで契約できます。
たとえば75歳の男性が、500万円の一時払い保険料を支払い、生存給付金と満期給付金の受け取り回数が5回のプランに加入したとします。米ドルか豪ドルで運用しますが、保険料を払った時と給付金の受け取り時の為替レートが同じだと仮定すると、米ドル(対円110円)で運用した場合は1回につき100万3801円、豪ドル(対円80円)では100万3450円の給付金を子供が受け取れます。複数の契約ができるので、複数の子供への贈与も可能です。
(ファイナンシャルプランナー 畠中雅子)