近ごろ都に流行るもの

コロナ禍で普及「オンライン診療」、自宅の画面で医師と対面 (1/2ページ)

 「口をあーんと開けて、中にライトを当ててください」。スマホの画面越しに医師が呼びかける…。こんな「オンライン診療」が広がっている。アプリで予約→診療→会計まで完結するとともに、処方箋・服薬指導も補完され、薬が自宅に届く合理的なシステムだ。コロナ禍で「感染が怖い」という受診控えの受け皿として、一気に認知された。患者側には時短で手軽に診療が受けられるメリットがあり、医療側にも新規患者の獲得という期待感もあるという。

 利用者は以前の10倍

 東京都医師会は新型コロナウイルス陽性者の自宅療養に対応するため、16日、オンライン診療を開始した。マイシン(東京都千代田区)のオンライン診療システム「クロン タイプC」が採択されている。

 5千超の医療機関が導入する国内最大のオンライン診療サービス「クロン」の簡易版としてコロナ禍で開発され、医療側と患者側双方の設定や作業を簡略化し、幅広い利用につなげている。「コロナ以前と比較し、オンライン診療の利用者数は約10倍にも増えている。収束後も定着、拡大していくものと期待しています」と同社の広報担当。

 一方、メドレー(東京都港区)が展開する「クリニクス」は約2600の医療機関と連携し、オンライン診療件数は昨年6月時点で10万回、今年4月時点で30万回を突破する勢いだ。

 放送作家も共同出資で設立

 「体調が悪いなか、化粧などの身支度を整えて来院する女性。子育て中の母親の場合、症状のある子が1人でも預ける人がおらず、兄弟全員を連れてくるケースもよくある。高齢者の通院に付き添う介護者の負担…。オンライン診療で、これらの不便を解消できる」

 オンライン診療アプリの横断検索サイト「イシャチョク」を6月に立ち上げた、オンラインドクター.com(ドットコム、東京都港区)の鈴木幹啓CEO(45)が、現役小児科医としての経験をもとに語った。

 昨年、自身のクリニックでもオンライン診療を始めたが、約10社のアプリが乱立し、患者が効率的に求める医者を探し出すことの難しさを感じた。「まとめて検索できる窓口的なプラットフォームがあれば、患者はクリニックの選択肢が広がり、クリニック側にとっては新規患者の獲得やPRにつながる」

 そんな構想のもと大手ITやグローバル金融の出身者、放送作家などとの共同出資で同社を創業した。

 鈴木医師は、自治医大卒業後34歳の若さで和歌山県内に開業。過疎地の深刻な少子高齢化に直面するなか、デジタル戦略と介護・高齢者住宅などの多角化経営を推進し、5年で年商6億円を達成した。実業家の顔を持ち、「オンライン診療にはマネタイズポイントが多い」と指摘する。

 診療報酬が対面よりも低く抑えられて医療側のメリットが少ない点や、スマホの扱いが苦手な高齢者へのアクセスなどの課題もあるなか、コロナ禍での時限措置としてオンライン「初診」が解禁されたことで、大都市圏から全国に広がっている。

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