ヘルスケア

「介護ユーチューバー」に注目集まる、神回はオムツ交換

 高齢者介護に10年以上携わる和歌山市在住の介護ヘルパー、西原隼登(はやと)さん(34)が、動画投稿サイト「ユーチューブ」で適切な介護方法などのテクニックを分かりやすく発信している。高校時代のバイク事故を機に介護職に就き、「介護ユーチューバー」を名乗る西原さん。段差での車いすの動かし方や、横漏れしないオムツの着け方などを、実演をまじえて詳しく解説。「若い人たちに、介護職に関心をもってもらえれば」と話す。

 今年6月に公開した動画「車椅子の裏技を解説」は、和歌山市内の民家で撮影。実際に車いすに人が座った状態で段差を上る方法を実演し、「前輪を浮かせて段差を越える」「体ごと車いすを押してあげればスムーズに進みます」などと解説している。

 他にも、耳に水が入らないように耳たぶを押さえる洗髪方法や、食事で高齢者がのどをつまらせないスプーンの運び方なども紹介している。

 動画のテーマは介護のテクニックだけでなく、介護職の具体的な仕事内容紹介などにも及ぶ。動画「話題No.1デイの日常のルーティーンに密着!」では、施設で体操やレクリエーションを楽しむ高齢者をサポートする様子も紹介。このような介護をテーマにした動画を、週1~2本ペースで配信している。

 西原さんは「介護現場で高齢者の声を参考に、自ら経験して身につけた介護方法などを紹介しています」と話す。

 感謝され「全身震えた」

 西原さんは中学時代、少年野球チームの主要メンバーとして活躍した。甲子園出場も期待されたが、高校に進学したばかりの1年生の春、親や学校に無断でバイクに乗り、民家の壁に衝突する事故を起こした。両足首を複雑骨折。最初に搬送された病院では両足切断の可能性も示唆された。1年間に5回の手術を受け、ついに高校を自主退学した。

 そんな西原さんを介護するため、ヘルパー2級の資格を取得した母親の加奈子さん(57)から「人の役に立てる仕事で第二の人生を始めてほしい」と勧められた。

 和歌山県内の特別養護老人ホームなどで勤務したところ、入所者から「おにいちゃん、ありがとうな」などと感謝され、「全身が震えるほどうれしかった。それまで人から感謝されるようなことはなかったから」と西原さん。

 平成28年に加奈子さんが介護サービスの会社を設立すると、西原さんもサポートすることに。経営にも携わる一方、現場で利用者の入浴や食事、排泄(はいせつ)などを介助した。

 「おむつ交換」は“神回”に

 そして昨年1月、ユーチューブチャンネル「介護の事ならピース&ピース」を立ち上げた。

 これまでの動画配信数は130本以上。登録者数は、開始時の数件から増え続け、今では2千件を突破している。

 閲覧者からは「勉強になりました」「分かりやすくてよかった」など高評価のコメントも多く寄せられている。

 昨年9月配信の「オムツ交換の大事なポイントをはやとさんが押さえます!」は傑出した内容で視聴者の人気を集めた“神回”で、尿の横漏れなどを防ぐオムツの着け方を丁寧に説明したところ、3万回以上再生されている。

 そんな反響に、西原さんは「今後はライブ配信などで、介護職を目指す人たちの質問に積極的に答える企画もしたい。肉体的、精神的にきつく、離職率が高いという介護職のイメージを楽しい動画で払拭したい」と意欲をみせている。(西家尚彦)

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