欧米の若者世代から始まった「FIRE(ファイア)」とは、Financial Independence Retire Early の頭文字で、「経済的に自立して早期リタイアを目指す」という動きです。日本の若者にもこの考え方が広がりつつあり、「FIRE」をテーマにした本やSNSが人気を得ています。
先日、30代前半で「FIRE」を達成したことを本に著した日本人が、ワイドショーで取り上げられていました。それに対する50代のコメンテーターの言い分は、「30代で辞めてしまっては、働く能力が養われないのではないか」「株の配当は変動するし、株価も暴落することがあるから、将来の収入は保証されない」というようなものでした。
意見としては正論ですが、今の20~30代は、定年まで会社で働く人生だけが選択肢とは考えていないのです。先行きが不透明で、会社に勤めていれば安泰だった時代とは違うことを肌で感じているのでしょう。
「FIRE」を目指すことにはさまざまな意見がありますが、私はいい面も多いと思います。(1)積極的に貯蓄や投資を始めること(2)投資にお金を回すために生活費の節約を真剣に考えて取り組むようになること(3)「いつまでにいくらためる」という計画と合わせて長期のライフプランを考えること-です。これらは家計を豊かにするためには必要なのに、みんながなかなか真剣に取り組めずにいたことです。
ただし、注意してほしいこともあります。お金をできるだけ早く増やしたいという気持ちから、怪しげな投資にはまってしまう可能性があることや、早期退職後は給料や退職金が入らず、将来の年金額も下がること、社会保障も国民健康保険や国民年金に自分で加入しなくてはならなくなることです。
「FIRE」には、自分で投資先を選んで実行できる力が一番大事です。怪しい投資商法のカモになってしまうようなら、「FIRE」の達成は難しくなります。
(マネーライター 生島典子)