近ごろ都に流行るもの

サボリ感知した時点で「受講不成立」に…AIで勤怠監視、リモート教習

 パソコンやスマートフォンでリモート授業。コロナ禍で一気に広がった学習スタイルだが、決して「楽」ではないようで? AI(人工知能)による本人認証・勤怠監視システムが認可され、自動車教習所の学科教習への導入が始まった。生徒が自由に教習時間と場所が選べる半面、よそ見や居眠りには容赦なく、サボリを感知した時点で「受講不成立!」。最初からやり直しを命じられる厳格さだ。IT技術による生活や経済の進化・発展を目指すDX(デジタルトランスフォーメーション)が国をあげて推進されるなか、今後の活用の可能性は幅広い。

 リモート教習を導入した東京都小金井市の教習所を利用する、中央大3年の斎藤奈緒さん(21)は、自宅や大学での空いた時間に学科教習を受けている。

 「教習所に通う手間が省けていいです」。大学もゼミ以外はリモート授業が続いているが「厳しさが全然違う」。動画を開いていれば出席になる大学と違い、教習所は画面から目を離したら中断・やり直し。「命に関わる免許なので、不満もあるが納得しています。集中を強いられる分、学習効果は高まると感じています」

 画面中央に教官による講義動画、サイドに自分(生徒)の顔が映り、AIアルゴリズムによる監視が常時ランダムに行われる。自動本人認証システム「オート・アカデミー」を開発したアカメディア・ジャパンの菊池参(まいる)社長(30)は、「不正受講を徹底的に防ぐことを目指した。自動車教習は本人が確実に受け、時間は1分でも欠けてはいけない」と力説する。

 2013年、米国の大学在学中に起業。AIの活用研究を進めるなか、昨年11月、オート・アカデミーの基軸となる本人認証システム・オンライン学習システムが特許(第6797388号)を取得した。その1カ月後、警察庁から「オンラインによる学科教習の実施について」の通達が発出されたことで各地で許可が進み、今年5月から教習所での実用化が始まった。

 申し込みは首都圏や新潟、北海道など全国約100校から殺到。いち早く導入した東京の小金井自動車学校では、900人の生徒全員がリモート教習を受けている。学科教習全26時限のうち応急救護などの実技を除く22時限が、24時間どこででも受講できる。

 「生徒は大学生など18~20代前半がほとんどだったが、『忙しいなかでも受講しやすい』と40、50代の社会人や主婦層の入校者が増えている」と同校業務課の曽我康裕課長(48)。

 生徒数はコロナ前の一昨年同時期より4割も増えた。「昨年の休校の反動もあるが、感染防止のため電車やバス利用を避けたいという意識が高まり、コロナ後、自動車免許取得に新たな需要が生まれている」

 教習所側にとって、オンライン教習のメリットは何か? 「教室が密にならないよう人数制限していたが、希望日時に受けられない生徒が出ていた。これが解消できたことが大きい」

 導入前の教習動画制作は大変だったが、実施後は教室が空きスペースになった。教官の配置にもゆとりができ、運転教習に注力できる態勢になったという。

 「リモートの弱点だった、なりすましや別の作業をするなどの不正受講をチェックするAIの精度は、日々進化している。効率的なオンライン学習は、コロナ収束後も普及定着してゆく」と、オート・アカデミー開発者の菊池さんは予測する。資格講座や研修への応用を求める相談も、続々寄せられているそうだ。

 公立小学校のタブレット学習など、社会生活のあらゆる領域で急速にDX化が進む。「AIが子供の宿題の見張り役にもなり、将来は家庭教師もいらなくなるかもしれませんね」

 少々息苦しい気もするが…。DXによる社会変革を加速させたのは、コロナ禍の数少ないケガの功名?。(重松明子)

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