夏に履きたくなる白い靴。爽やか、スマート…見た目だけではない。涼しいという肌感覚で自然と選んでいたのかも!? 高温多湿の日本で、白革のスニーカーが半世紀近くのロングセラーを続け、最近はビジネスカジュアルにも取り入れられている。また、炎天下で熱戦を展開する高校球児のスパイクも、オセロのように黒から白へ変化中。熱中症対策の一環として、日本高等学校野球連盟が白を解禁したという経緯がある。(重松明子、写真も)
好投手が突然足をつって降板、無念の敗退…。高校野球ファンなら見たことがあるだろう、夏の悲劇だ。
「選手は目の前の勝負に集中しており、熱中症を自覚しにくい面がある。白いスパイクで少しでも予防できたら」。スポーツ用品大手、ミズノの野球スパイク企画担当、田林正行さん(36)が語った。平成14年、夏の甲子園で準優勝した智弁和歌山高の元エースだけに、選手への配慮にも実感がこもっている。
黒限定だったスパイクの色が、昨年から白も認められたのに合わせて「白スパ」の愛称で発売し、現在8型。同社が最高気温32度の真夏日に屋外で行った測定調査によると、スパイク内部の最高温度は黒で53・3度、白が42・8度。表面温度に至っては黒の最高が69・5度、白が48・9度と顕著な差が判明した。
今年3月。2年ぶりに開かれた選抜大会では、早春ながら7割のチームが「白」で甲子園に臨んだ。
夏の地方大会を目前に控えた今、強豪校以外にも“ホワイト化”が広がり、製造が追いつかない人気という。「今月末までには通常出荷できるよう、間に合わせたい」と田林さん。増産体制で頑張っている。
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白い牛革に、通気口となるパンチ穴で表現した3本線の上品さ。ドイツのスポーツ用品会社、アディダスの「スタンスミス」は、半世紀近くにわたるスニーカーのロングセラーだ。
「世界のなかでも日本は特に売れている国。シンプルでスマートな形状はどんな装いにも合うため、パンプスよりもスニーカーを好む女性や男性のジャケットスタイルなど、老若男女に好まれている」と、アディダスジャパンマーケティング事業本部の古谷佳祐さん(35)。春夏によく売れるそうで、高温多湿の日本の気候と関連あるかも?
1973年、米国の人気テニス選手の名を冠して発売された。日本では為替が1ドル=308円の固定から変動相場制に移行した年で、輸入品は高根の花。当時初任給で買ったという60代男性によると、国鉄(現JR)初乗り運賃30円の時代に1万円以上もしたそうだ。アメカジやアイビールックに合う若者の憧れだった白い靴。現在は1万4300円ほか廉価版もある。
今季からSDGs(持続可能な開発目標)の観点から、再生素材の合成皮革に転換。風合いや見た目はそのままだ。またアディダスはこの夏、日本人芸術家の高橋理(ひろ)子氏とコラボした法被や浴衣風のジャケットなど、80点超の商品をグローバルで販売。白い革に和の文様を凹凸で印したデザインなど、「今だけ」のスタンスミスも登場している。
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女性靴でも白はトレンドだ。東京都千代田区の「fitfit(フィットフィット)」日比谷シャンテ店では、ラメのブレードで編んだ素材のスニーカー(1万890円)の白が人気。「白が黒の4倍売れている靴もある。例年は無難な黒が強いが、今年は白も定番化。足元に白を持ってくると、レフ板効果で顔色が明るく見えます」と広報の玉田るみかさん(24)。
同社では夏場の履き心地を重視し、歩きながら靴内の空気を循環させる構造の「空気(いき)するパンプス」をオンライン限定で新発売。8時間着用した実験では、自社従来パンプスとの比較で足裏温度が約3度下がった。「足腰の筋力は健康のベース。涼しい足元で楽しく歩いてほしい」
これからが夏本番。身に着ける色も考えて快適に!