家を買うと税金が戻ってくる制度としておなじみの「住宅ローン控除」。2021年の税制改正で、従来より小さな家でも適用となる変更がありました。この改正でマイホーム購入を躊躇していた単身者の人も一人暮らしサイズのマイホーム購入が近づきます。
■住宅ローン控除の変更点
従来の住宅ローン控除は、前年の所得額が3000万円以下、かつ住宅の床面積が50平米以上という条件がありました。令和3年度の税制改正では、従来に加えて住宅の床面積を40平米以上に緩和し、その条件として前年の所得額が1000万円以下とされました。
住宅の売買が活性化しなければ経済の停滞が改善されません。景気回復のための減税措置の一環として、独身者を対象とした住宅ローン減税に踏み込んだことになります。
まず、従来の50平米という広さですと2LDK以上の間取りとなります。若い単身者にとっては一部屋余分になる印象です。将来的に家族が増える前提であれば従来型の住宅ローン減税でも差し支えありませんが、一生独身を貫く予定の人には、部屋の多さは維持費の高さになり非効率です。
厚生労働省が公表している「2019年国民生活基礎調査の概況」によると、世帯所得の中央地は437万円、平均で552万円。世帯所得が1000万円以下の世帯が88%となります。所得3000万円を超える世帯は全体の1%に満たない(2000万円以上世帯が1.2%のため)と考えられますので、年間所得が1000万円を超える高所得者以外の単身者にとり有利な減税のように見受けられます。
■気をつけたい年収に応じた所得税額、住民税額
住宅ローン減税を利用する場合に気をつけたいのは、自分の税額です。所得税額は源泉徴収票に記載があります。住民税額は年に一度課税決定通知書という書類を勤務先から受け取るはずです。
筆者が単身者の所得税、住民税を試算したところ以下のような税額になりました。
年収300万円 所得税額55,500円 住民税額 116,300円 合計171,800円
年収400万円 所得税額86,800円 住民税額177,600円 合計264,400円
年収500万円 所得税額139,300円 住民税額241,500円 合計380,800円
年収600万円 所得税額208,000円 住民税額308,700円 合計516,700円
年収1000万円 所得税額848,900円 住民税額637,000円 合計1,485,900円
住宅ローン控除を有効活用するには、住宅ローン残高×1%というルールを認識する必要があります。さらに、住宅ローン控除上限として一般住宅40万円、認定住宅50万円という天井が設けられています。
認定住宅は耐久性、耐震性、省エネ性能などで一定の基準をクリアする住宅となります。購入したい物件が適用になるかどうか、不動産会社に確認すると教えてくれます。
自分の税額と借りたい住宅ローン金額を見比べましょう。「自分の税額>住宅ローン残高×1%」の場合、住宅ローン控除の枠を使い切れていないことになります。反対に、「自分の税額<住宅ローン残高×1%」の場合、住宅ローンを借りすぎということが言えます。※住宅ローン控除の上限に満たないことが前提です。
もしかすると、不動産会社は単身者に住宅を販売しやすくなったとして、ここぞとばかりに営業してくるかもしれません。その時のセールストークの1つは住宅ローン減税でしょうから、自分の税額を把握しておかないと、セールストークを真に受けていいのか判断ができないことになります。