島国日本の交通を支えてきた船の利用を促進しようと、神社などでもらう御朱印になぞらえた「御船印(ごぜんいん)」を船に乗って集める「御船印めぐりプロジェクト」が始まることが29日、分かった。全国の旅客船が連携して同一のプロジェクトを進めるのは初めて。新型コロナウイルスの流行で苦境にある旅客船業界に新たな需要を呼び込めるか、期待が集まっている。
「御船印めぐり」は全国500社以上の事業者からなる日本旅客船協会の船旅アンバサダーで、旅作家の小林希(のぞみ)さんが発案。神社や寺院で参拝の証しとして数百円で授与される御朱印がブームとなり、御朱印帳を手に全国を旅する人が増えていることから、その“船”版を考えた。
プロジェクトには北海道から鹿児島まで全国に観光船やフェリー、遊覧船の発着地を持つ46社が参加し、4月から順次開始される。船や航路に応じて各社が船名や航路、日付やスタンプなどが入った独自の印を作り、港や船内で販売。人気が高い、祭事や季節に合わせた限定の御朱印のように、引退した船の御船印を限定販売するなど、ファン心をくすぐる企画も考える。公式の「御船印帳」も発売し、一定数の御船印を集めると、「一等航海士」「船長」などの認定が得られるマスター制度も始める。
少子高齢化で輸送量が伸び悩む中、新型コロナの感染拡大による外出自粛や観光客の激減で、旅客船業界は厳しい経営環境にある。流行初期に豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」や屋形船での集団感染が伝えられたこともあり、同協会の山崎潤一会長は「旅行社を通じてツアーで乗船する観光客が特に減った」と話す。東京・竹芝から伊豆大島や三宅島などに船を出す東海汽船(東京)の昨年の旅客数は、前年比45%減。堅調な貨物輸送に下支えされたものの、緊急事態宣言が出されていた昨年5月には、旅客数は前年同期比94%減にまで落ち込んだ。