ヘルスケア

変異株感染者、週1・5倍ペースで拡大 東京は検査態勢構築急ぐ

 緊急事態宣言の全面解除に伴い、新型コロナウイルスのリバウンド(感染再拡大)が懸念される中、変異株の感染者が国内で1週間に1・5倍のペースで拡大している。従来株より子供の感染割合が高い傾向がみられるが、最近では高齢者を含むクラスター(感染者集団)が起きており、重症者・死者の増加も懸念される。政府は監視強化のため検査の拡充を目指すが、地域的な偏りが目立つ。

 10歳未満が最多19%

 厚生労働省によると、空港検疫を除き、国内で確認された変異株は16日時点で26都道府県の399件。2日時点の165件、9日時点の271件から1週間に1・5倍のペースで増加。16日以降も宮城、福岡などで初めて検出され、全国的な広がりが止まらない。

 厚労省が分析した194件の中では10歳未満が19%を占め、全年代で最も多い。感染者全体では3%にとどまるため、変異株における子供の感染割合の高さが際立つが、全年代で感染力が強まっているというのが専門家の見方だ。

 保育園など子供関連の施設で変異株クラスターが相次いでいる影響が大きいとみられ、国立感染症研究所の脇田隆字(たかじ)所長は「十分に全体像をつかめているわけではなく、解析を進める必要がある」と指摘。その上で「子供たちの間や子供から大人に感染しやすい状況があるなら、これまでと対策が変わってくる可能性がある」と警戒感を示す。

 重症化しやすい英国型

 一方で、今月に入り、高齢者が参加するイベントなどでも変異株クラスターが発生。千葉県では昼間にカラオケ店を利用した高齢者ら12人が集団感染し、1人が重症だった。歌唱時にマスクを外している人がいた。札幌市で行われた食品関連会社主催の集会では、従業員や参加者ら13人の英国型の感染が確認された。高齢者も含まれるという。

 国内で9割以上を占める英国型は従来株より重症化しやすく、致死率が高くなるとの報告もあり、東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は「蔓延してくると高齢者も感染するようになり、致死率が高くなる可能性がある」と危惧する。

 将来的に変異株が従来株を上回る可能性が高いとみられ、早期に検出するための検査拡充も課題だ。(【救いの一手になるか】島津製作所が尿や血液で「コロナ重症化を予測する」分析法確立)

 神戸66%、東京わずか10%

 厚労省の集計では、1~7日に全国で1884件の検査を実施。同時期の新規感染者7231人の26%を行った計算になり、厚労省が求める5~10%をクリアしている。ただ、神戸市が直近の1週間で感染者の66%を検査したのに対し、感染者が最も多い東京都では約10%にとどまるなど地域差が大きい。

 政府は宣言解除後のリバウンド防止策として、検査割合を40%に引き上げることを目指す。東京都も民間検査機関での検査を拡大するなどして、4月上旬に約25%、さらに早期に40%に拡大するという。

 濱田氏は「大都市圏ではすでに変異株が広がっていてもおかしくない。特に東京都ではスクリーニング(ふるい分け)体制が十分でなく、早急に構築する必要がある」と強調する。

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