■キャッシュカードが認知症ケアの命綱
本人が認知症でお金の管理ができない場合。資金管理の鍵となるのはキャッシュカードです。本人のカードを家族が利用するか、家族カードを発行して本人に代わって引き出します。認知症にも関わらず、後見制度を利用しない98%の人は、家族が本人に代わってお金を引き出しているか、立替えていると考えられます。
実際に、将来の成年後見制度の利用を念頭にした相談を受けることがあります。その歳、成年後見制度の情報を伝えると、「なるべくなら利用したくない」という意見が出てきます。そもそも家族が認知症のケアをしているのに、面倒な制度を使うと他人の介入があるかもしれないと考えれば当然の反応と思えます。
そこで検討される事前準備が、キャッシュカードの発行と家族カードの発行となるのです。キャッシュカードを紛失するか磁気が効かなくなるまでは成年後見の申立をしないで過ごしたい。それが家族の想いでもあるのです。介護サービス側もそのあたりはわかっていますから、無理に成年後見の申立をすすめるケースは少ないでしょう。
■家族が資金を引き出せたら勝手にお金を使われないの?
今後、認知症の方の資金を引き出す際に考えるべき点は2つあります。1つは家族が勝手にお金を引き出し、他の家族とトラブルになること。もう1つは預金の引き出しに応じた銀行が、悪事に加担したという理由で訴えられること。
銀行側は預金引き出しにおいてリスクが大きく、リターンはほぼありません。預金の引き出しに応じる手順を踏めば、人手と時間が必要です。家族が都度資金を引き出すようなやり方では手間がかかりすぎますので、認知症の方宛の請求書を発行してもらい、銀行が直接請求者に支払う制度が現実的でしょう。また、支払いの資金使途を医療、介護などに限定しなければ、何のための買い物かわからないような支払いに充てられたり、詐欺に巻き込まれる可能性もあります。
認知症の方の生活を守るために、銀行がどこまで対応するか注目しましょう。
【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら