イスラエルが世界で群を抜く速さで新型コロナウイルスのワクチン接種を進めている。ロイター通信などによると、すでに4人に1人が接種を受け、3月中旬までに人口の半数を超えるとの見通しもある。進み具合に差がみられる各国も、接種を加速させようと必死だ。
英オックスフォード大の研究者らの統計によると、14日現在、イスラエルの人口100人当たりの接種率はほぼ25%に達している。アラブ首長国連邦(UAE)が15%、バーレーンが6%で続き、英国は5%、米国は3%。
イスラエルでは先月19日、60歳以上の市民や医療従事者らに対する米ファイザー製ワクチンの接種を開始し、対象の7割超が1回目の接種を済ませた。同国保健省は今月12日、50代に対象を引き下げて接種を始める方針も示した。
イスラエルは国民に「健康維持機構」(HMO)への加入を義務付け、疾患に関する情報をデータ管理している。これを活用して順番を決め、優先度の高い人に個別に連絡するなどして接種をスムーズに進めた。
保健省は今月上旬、接種を受けた人に大人数の会合への参加や文化施設などへの訪問を許可する「グリーンパスポート」の発給も検討していると発表。積極的にワクチンを受けるよう国民の背中を押している。
また、UAEなどペルシャ湾岸諸国は出稼ぎ外国人が多数を占めており、ワクチン確保などの感染防止策を早くから講じていた。
米国は2回目の接種用に保管していた新型コロナウイルスのワクチンを全量放出し、1回目の接種拡大を優先させる方針に転じた。米国では昨年末までに2千万人への接種を目指したが、予定通りに進まなかったためだ。
中国政府は昨年末、国有製薬大手の中国医薬集団(シノファーム)が開発したワクチンを承認。公共交通機関など感染リスクが高い職種の人々から接種対象者を広げていく方針で、北京市内では接種者が100万人を超えた。中国当局は「全国民に無料で提供する」と表明し、さらに広げたい考えとみられる。
ロシアではこれまでに80万人以上がワクチンを接種した。プーチン大統領は13日、自国産ワクチンの生産が必要量に達したとして「来週から全国民を対象にワクチン接種を開始すべきだ」と命じた。
(カイロ 佐藤貴生、ワシントン 住井亨介、北京 三塚聖平、モスクワ 小野田雄一)