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(189)苦しい感じでもマスクは安全

 マスク着用は私たちの生活にすっかり定着しました。もともと日本では花粉症やインフルエンザの流行期などにマスクをする人が少なからずいました。しかし欧米では限られた職種や状況で着用するものという考えでした。新型コロナの流行が始まってしばらくしてから、感染予防にある程度効果的である、少なくともしないよりはまし、という考えが広まり、欧米でも公共の場所では多くの人がマスクをするに至っています。

 高血圧で通院している60代後半の男性患者さんは新型コロナが流行するまでマスクはしなかったそうで、着けていると息苦しさを感じ、つい外してしまうそうです。マスクが必要だとはあまり考えていない様子で、「むしろ体に悪いのでは?」とまで言っています。マスク慣れしていない人にとっては息苦しさを感じることもあるでしょう。では実際に血液中の酸素濃度にはどの程度の影響を与えているのでしょうか。

 規模は小さいですが、このことについて調べた研究結果が10月に米国の医学雑誌に発表されています。カナダ人の高齢者25人を対象に、マスク着用前、着用中、外した後にそれぞれ日常の活動を行い、血液中の酸素飽和度を測定したものです。平均年齢は76・5歳で、心肺機能が著しく悪い人は含まれていません。マスクは使い捨ての一般的なものです。結果はどの時点でも酸素飽和度は96%台で大きな変化はありませんでした。また酸素飽和度が92%を下回ると酸素が足りないと考えるのですが、そのような状態になる人は一人もいませんでした。

 この結果から、普通の人はたとえ高齢であってもマスクで低酸素状態になる危険は少なそうです。ただ心肺機能が著しく低下しているような人は、医師と相談した方がよいでしょう。自分でマスクの着脱ができない人、苦しさが伝えられない幼児なども着用を避けるべきです。

 マスクの感染予防の効果についてはまだ確定的ではありませんが、今のところは効果があるものとして、何でもできることはやっておくという態度がよいのではないでしょうか。(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

=次回は12月10日掲載予定

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